2019年の秋は、台風15号や19号、相次ぐ大雨などにより、全国各地で水害や土砂災害などが発生した。近年、自然災害の発生件数が増加傾向にあるなかで、自然災害による企業活動への影響は、自社のみならず、取引先などに広がることも懸念されている。そこで、帝国データバンクは、自然災害に対する経営上のリスクへの対応状況について調査を実施した。
『対応を進めている』企業は3割に満たず、6割以上の企業で『対応を進めていない』
自社における自然災害に対する経営上のリスクへの対応状況について尋ねたところ、自社の防災や経営上の対応だけでなく、他社への影響も考慮して対策や計画などを策定しており「十分に対応を進めている」企業は、全体の0.8%となった。自社の防災や経営上の対応について対策や計画などを策定し「ある程度対応を進めている」企業は26.2%。結果として、自然災害リスクへの『対応を進めている』(「十分に対応を進めている」と「ある程度対応を進めている」の合計)企業は27.0%にとどまった。
他方、検討はしているが対策や計画などは策定しておらず「あまり対応を進めていない」とした企業と、検討していない/検討する必要はないとした「ほとんど対応を進めていない」企業の合計、『対応を進めていない』は66.4%だった。現状、企業の3社に2社が自然災害に対する経営上のリスクについて対策や計画などを策定していないという結果となった。「あまり対応を進めていない」(45.0%)が最も高くなるなど、多くの企業で検討はしているものの実際に対策や計画などの策定に至っていない実態が浮き彫りとなった。
近年自然災害の被害を受けた地域が『対応を進めている』傾向が高い
都道府県別にみると、『対応を進めている』企業の割合は「高知」(44.2%)が最も高く、4割を超えた。「高知」は南海トラフ地震で大きな被害が想定され、県内企業の防災への意識の高さがうかがえる。以下、「和歌山」(38.6%)、「宮城」(36.8%)、「奈良」(36.5%)、「千葉」(33.1%)が上位にあがった。近年、震災により大きな被害を受けた地域や水害などが発生した地域、今後大地震が想定される地域などに所在する企業で、自然災害に対する経営上のリスクへの対応を進めている傾向がみられた。
地域、他社と連携し、自然災害リスクに対応を
国や自治体においては、地震や津波、洪水、土砂崩れなどのハザードマップを作成し、万が一に備え対応できるよう様々な媒体を活用し啓発している。
しかし、大規模な地震や台風、豪雨などの自然災害に対する経営上のリスクについて、自社のみならず他社への影響も考慮した対応を行っている企業は非常に少数にとどまった。また、自社の防災や経営上の対応に限る企業を含めても3割に満たない。多くの企業でリスク対応について検討はしているものの、実際に対策や計画などの対応は進んでいないことが明らかになった。
他方で、都道府県別にみると、これまでに震災や台風による水害などで大きな被害を受けた地域や今後大地震が想定される地域に所在する企業では、リスク対応をより積極的に取り組んでいる様子もうかがえる。
企業における自然災害に対するリスク対応は、地域によって濃淡がみられる結果となった。しかしながら企業活動への影響を鑑みると、企業は迅速に地域や他社などと連携し、危機管理対策の一環として自然災害というリスクに対応することが求められている。(2019.12.24(火) 11:53配信 帝国データバンク)
企業の防災力強化=BCPの策定です!!しかしながら中小零細企業にはお金も時間も人材も不足しているという現実があります。その課題に対して国や自治体がどのような支援をするのかが大きな転換点になるのではないでしょうか。