記録的大雨をもたらした台風19号は、停電と断水が続いた川崎市の47階建てタワーマンション(タワマン)をはじめ、都市部の集合住宅の弱点を浮き彫りにした。川崎のケースでは下水道の逆流で地下にある電気系統などが故障した可能性が高いが、こうした重要設備をスペースの事情から地下に設けるマンションは多い。止水板の設置などの効果も限界があり、専門家は綿密な防災計画の策定や災害弱者の把握といった「ソフト対策」が有効との見方を示す。
■近くに川がなくても…
「エレベーターやトイレが使えなくなる事態は避けたいが…」。大阪市内のタワーマンションに住む60代男性は、川崎・武蔵小杉駅近くの出来事がひとごとでないという。男性が居住するタワマンの地下には電気室などがある。近くに大きな川はなく、水害リスクも特に考えたことがなかったというが「今回の問題を機に管理組合とも対策を話し合いたい」と語った。トラブルが起きた川崎のマンションは、約1500人が暮らす47階建て。建物そのものへの直接的な浸水被害はなかったが、川崎市などによると、周辺にある下水道が増水の影響で排水できなくなり、逆流などが起こった可能性がある。このため地下の電気系統が浸水で故障し、停電や断水が発生。エレベーターやトイレが使用できず、住民の生活を直撃した。
■浸水で機能不全に
ただ、こうしたリスクがあるのはタワーマンションに限らないという。日本マンション管理士会連合会(東京)の瀬下義浩会長によると、戸数の多い大規模マンションは通常、地下深くまで掘削したうえで施工されている。居住空間ではない空間を有効活用するため、配電盤や水道水の受水槽、水を上階へと引き上げるための給水ポンプなどの重要な設備が、地下に設置されるケースは少なくない。このため大規模マンションは、地下の浸水を許すと、電気系統にトラブルが生じ、一気に機能不全に陥る可能性がある。こうした被害を防ごうと、多くのマンションには、地下設備を水から守る止水板や排水ポンプなどがあるが、「一定基準の雨量を超えると処理ができない」という。
■心構えと準備を
水の対策には限界がある。その上で住民ができることは何なのか。「地下にどんな設備があり、浸水が起きた場合、どんな事態が想定されるか住民側が事前に把握しておくことが大切だ」と瀬下氏。中・高層階に防災備蓄品を分散することなど、「最低限の手続きは管理組合で決めておくべきだ」と話す。マンションの防災に詳しい千葉大の小林秀樹教授は、一般論として「(災害時に)上階や廊下に避難できるマンションは、人の避難という観点では本来優れている」。建物自体は地震や台風に強いが設備の被害が予想されるため、ソフト対策が重要になるとの認識を示す。具体的には「高齢者などの災害弱者の存在をあらかじめ把握し、必要ならば低層階の集会室などで生活するような防災計画も有効」と指摘。「しばらくの困難を乗り切る心が構えと備蓄などの準備が必要」とした。(2019.11.4(月) 19:22配信 産経新聞)
マンションの構造体はそのつくりからもハード的観点で言えば災害に強いといわれています。しかしながら集合住宅という特殊形態であることでソフト部分においてはあらゆることを想定してルールを策定しておかなければ生活に支障をきたします。マンションにお住まいの方は今一度、ご自分のマンションの防災ルールについて確認してみてください。