「水災補償」付帯なら対象

東日本を中心に相次ぎ発生した台風により、事業活動に影響を受けている企業は数多い。生産拠点への浸水で、操業停止を余儀なくされたり、機械が水に浸って使用できなくなった事例も少なくない。中でも懸念されるのは、火災保険に水災補償を付帯していなかった企業には、機械の買い替えに必要な保険金が支払われないこと事業再開が難しくなれば、経営基盤が弱い中小企業は一気に弱体化する事業継続計画(BCP)の一環として、保険内容の確認・見直しも求められる

火災保険は火事を事故原因とする損害を補償し、対象物は建物や設備、商品などに細分化される。一般に水災害の被害を補償対象とするには別途、火災保険に水災補償の契約を付帯する必要がある。大手損害保険会社によると、約8割が水災補償に加入しているが、残る約2割は対策を講じていない。

企業の水災対策への意識は高いとはいえない。事実、BCPの策定率は地震との対比で大きく下がる。SOMPOリスクマネジメントの石井和尋BCMコンサルティング部部長代理は「水害に特化したBCPを定めている企業はほとんどゼロに等しい」と指摘する。中小製造業者の多くはリスクヘッジとして火災保険に加入しているが、保険金支払いの対象となる財物や事故原因を再確認し、契約を見直すことも重要になる。

一連の台風で工作機械が冠水した金属加工業のA社は、損害に衝撃を受けながらも、当初は「損害の大半は火災保険でまかなって復旧できる」とみていた。だが後日、あらためて契約内容を確認した代理店に告げられた言葉にあぜんとした。「台風被害には使えない」というのだ。契約していた火災保険には水災補償を付帯していなかった

また台風で設備が水没した印刷業のB社は、火災保険は代理店任せにして、契約書を自ら読み返すことはなかったが被災後、あわてて目を通した。結果、「たまたまだけど水災補償の契約をつけていた。復旧に向けて課題山積だが、幸い、のぞみはつながった」という。

他方、今回の台風被害を免れた切削加工業のC社。各地で発生した水没被害の状況を見聞きするたびに、過去の判断を思い返す。「ころばぬ先のつえとはいうが、いつ起きるか分からない天災に備え、高額な保険料を払うべきだろうか」。迷った末、半信半疑で契約書に判を押した。だが想定外の災害を目の当たりにする中、「事業継続に保険は不可欠」という思いに変わった。(2019.11.5(火) 8:47配信 ニュースイッチ 日刊工業新聞)

生命保険にしろ損害保険にしろ、その加入目的はリスクヘッジです。リスクをどのように想定するのかが保険加入のベースになります。特に最近の損害保険は複雑化してよくわからないと代理店に任せてしまうケースも多くあります。大切なことは保険の仕組みを理解することではありません。リスクを想像することです。想像できたらその内容を保険代理店に伝えてください。その後保険代理店が設計した契約内容を確認することです。確認項目は「どのようなケースの場合保険金が支払われないのか」です。今一度加入されている契約内容をご確認ください。