台風8号は渡嘉敷島に50年に一度の大雨をもたらし、県内各地で冠水や土砂崩れなど、被害が相次いだ。台風による大雨にどのような心構えと備えが必要なのか。

道路では車のタイヤがすべて水に浸かってしまうほどに冠水。 立往生する車で渋滞も発生した。

沖縄地方を通過した台風8号。渡嘉敷村で観測史上最多となる1時間に115.5ミリの雨が降るなど各地で記録的な豪雨となった。

うるま市の天願川は氾濫危険水位までに達し、一階が水に浸かった住宅では朝から泥をかきだす作業に追われた。

▽浸水した住宅の住民

『(ここに来て)7年くらいになるけど、初めてここまで溜まっているのを見た。台風がそれたから今回は大丈夫かなと思ったんだけど、こんなに雨が降るとは思わなかった』

台風8号はなぜこのような大雨をもたらしたのか・・・。

▽沖縄気象台・比嘉良守気象官

『一般的に台風が来ますと風に注目されがち。今回も台風が遠ざかりつつある中で暴風警報の発表を解除という段階を踏んだが、今回の台風8号は北上する速度も遅いこともあって、南側に雨雲を多く持っていた』

比嘉さんは、風や波に比べて雨の予測は難しく、最新の情報を得ることが必要だと注意を呼びかけた。

『台風が遠ざかりつつあるなかでも風が弱まってきたときでも、南側には雨雲を持っている雲がある多々ある。そういう状況も気象台が発表する気象情報・警報をみて、対応していただければと思っています』

この大雨で土砂災害の危険度が高まっているとして、県内では一時23の市町村で土砂災害警戒情報が出された。 そのうち沖縄市や浦添市など6つの市と町では一部地域を対象に避難勧告を発令し速やかに危険な場所から避難するよう呼びかけた。

沖縄市の避難勧告は午後4時過ぎに土砂災害警戒区域の住民およそ1万5000人と、午後8時に比謝川周辺の住民1200人を対象に出されましたが、避難所に足を運んだのは3人だった。

▽土砂災害警戒区域に住む男性

『(昨日は)そんなに風も特別強いという感じでもなかったから(避難しなかった)。(ここは)何十年か前には一回崩れたことがあったらしいんだけど、これ以上は崩れないみたい』

▽避難勧告が出た地域に住む女性

Q避難勧告が出て避難はしましたか?

『いえ、3階に住んでいるので、しなくても大丈夫かなと思って』

▽防災士・稲垣暁さん

『(避難者は)少ないとは思うんですけど、条件が良くなったんでしょうね。暗くなる中での避難が危険ではないかという思いがあったり、それに加えて自分はこれぐらいだったら大丈夫だという根拠のない心理、“正常性バイアス”というんですけど、こういったものが働いたとか、複数の理由が交錯して避難行動に繋がらなかったと思います』

防災に詳しい稲垣さんはこれまでに経験した事のないような災害が近年数多く発生している事から、「今回も大丈夫だ」と思いこまず状況に応じた避難行動を住民自身で判断する必要があると指摘する。

『いつでも迅速に避難できる体制を心がけていかなくてはならないし、そのためにはハザードマップで自宅の立地を確認しておくことが必要です』

稲垣さんは避難勧告の周知方法にも課題があると指摘する。 今回各自治体は地域の防災行政無線や緊急速報メールを使って避難勧告を呼びかけたが、特に情報弱者と呼ばれる高齢者は無線が雨で聞こえない事もあり、また通知も見逃してしまう恐れもあると危惧する。

そんな中で避難を促す方法として特に有効とされるのが、家族や身近な人からの声かけだ。電話などで避難を呼びかける事が大切な人の身の安全を守る事につながると稲垣さんは話す。 台風シーズンは続く。今回の大雨を教訓に平時から災害への備えを心がける必要がある。(2020.8/25(火) 19:15配信 沖縄テレビ放送)

正常バイアスは人間に必要な能力ですが、それが避難行動の弊害になっています。防災対策には行動が絶対に必要です。特に情報と状況を収集・分析して行動に移すことです。ところが行動に移すには日ごろの訓練が必要です。家庭内防災訓練を家族みんなで行ってみましょう。