東日本大震災で児童・教職員84人が犠牲になった宮城県石巻市立大川小を巡り、学校や教育委員会の事前防災の不備を認めた控訴審判決の確定を受け、県教委が設置した「学校防災体制在り方検討会議」が提言案をまとめた。

県内の学校や教委に調査した課題を踏まえ「児童生徒の命を確実に守る覚悟」を促す研修の実施や、地域ぐるみの防災マニュアルづくりなどを盛り込んだ。

提言を含む報告書案は10月末に開かれた最終の第4回会合で示され、防災の専門家や教育関係者ら委員がおおむね了承した。年内にも完成版を公表する。

報告書案は「はじめに」で判決が指摘した事前防災の不備を「教委や学校に不可能なものを求めているのではなく、学校保健安全法に基づき当然負うべき『安全確保義務』」と明記。大川小の事故を繰り返さぬよう、すべての教職員と教委に「児童生徒の命を守る強い覚悟を持たなければならない」と求める。

提言策定にあたり県教委が行った調査は、仙台市を除く市町村立学校488校と教委(小中高、特別支援学校、県教委含む)を対象に9月に実施。確定判決の指摘や震災の教訓を基に、過去3年間の事前防災の取り組み状況を確認したという。

この結果を基に、提言は「教職員の災害対応力の強化」や「地域ぐるみの学校防災体制の構築」など四つの基本方針を掲げた。すべての教職員が不測の事態に対応できるための研修や、役割や業務が防災担当に集中せず組織的に対応させる体制整備、住民と連携し防災マップを作成するなど、地域の災害特性を共有する取り組みとその支援を学校と教委に求めている。

委員長を務めた東北大災害科学国際研究所の今村文彦所長は「進化する提言になればいい。県内外や世界とも共有し、行政のトップの知事にも直接説明したい」と述べた。

伊東昭代教育長は「形だけにならずにいかに実行するか、本気度が問われる。市町村教委とも話し合いながら検討していく」と述べた。

委員を務める大川小遺族で名取市立みどり台中の平塚真一郎校長は終了後「提言して終わりではなくスタート。どんなにいい報告書ができても運用するのは人で、これから人を育てる役割も課せられている。未来の命を守るために尽くしていきたい」と話した。

傍聴した元教諭で児童遺族の佐藤敏郎さん(57)は「あの日先生らが避難できなかった原因は意思決定の遅れと判断ミスで、背景に形だけのマニュアルと市教委のチェック不足という備えの問題があった。両者はつながっている」と指摘。分厚いマニュアルや研修ばかりにならず、先生たちがシンプルに子供たちの命と向き合えるようにしてほしい」と要望した。(2020.11.19(木) 11:03配信 毎日新聞)

東日本大震災から10年です。スタートしたことは素晴らしいと思いますが、あまりに遅い。スピードを持って形だけのマニュアルにならないようにしていただきたいと。その時、子供たちの命は先生方の判断にかかっています。