災害時にマンションを「在宅避難」の拠点にしようと、座間市の東建座間ハイツが液化石油ガス(LPG)による独自の発電システムを導入した。停電時にエレベーターや共用部の電源を確保でき、都市ガスの供給が止まった場合は炊き出しも可能だ。居住者が高齢化し、避難所で過ごすのは負担が大きいことから、管理組合が「被災後もマンション生活を維持しよう」と発案した。さらに、近隣住民を受け入れる「地域避難所」としての役割も果たす考えで、共助の新たな形として注目されそうだ。
導入したのは、同ハイツ2号棟(14階建て、219戸)の管理組合。「石油ガス災害バルク」と呼ばれるシステムで、屋外の共用スペースに昨年12月、容量約1トンのLPG貯蔵タンクと発電設備を設置した。同様のシステムは、学校や福祉施設、病院などで普及が進んでいるという。
大地震などによる停電時にLPGで発電設備が自動的に起動する仕組みで、「共用部の廊下や階段の電灯をつけることが可能。2基あるエレベーターのうち、どちらか1基を動かせる」と理事長(74)。加えて、各住戸が使用している都市ガスの供給がストップしても、タンクにコンロなどを接続すれば加熱調理ができる。
貯蔵しているガスで3日間程度のエネルギーを確保できるが、LPG事業者から継続してガスの供給を受けることにしており、被災生活の長期化にも備えている。
こうしたシステムを取り入れたのは、「入居から40年以上過ぎ、高齢の居住者が増えた」からだ。1981年以前の旧耐震基準で建てられており、建物の強度に不安もあったが、「耐震診断を受けて問題がないことが確認された」ため、約1800万円をかけて導入に踏み切った。修繕積立金を取り崩して費用を捻出し、東日本大震災を受けて2013年度にスタートした国の補助金も活用する。
座間ハイツ防災会会長(76)は「災害時に住民が14階まで階段で上がるのは困難。エレベーターが動くのであれば、窮屈な避難所で過ごすよりマンションで生活した方が負担は少ない」と導入の意義を強調。ハイツから最も近い避難先である市立立野台小学校の体育館に収容可能な人数は265人にとどまるため、「400人以上いる2号棟の住民が全員逃げ込めば、避難所がパンクしてしまう」という懸念もあった。
こうした事情を踏まえ、エントランスなどの共用スペースを生かして、2号棟以外の5棟などから住民を受け入れることも想定している。昨年12月には、地域避難所として市に登録。小中学校など公的な避難所が被災したり、避難者が収容しきれなくなったりした場合は、受け入れに協力することにした。
地域避難所の登録は市内初で、市の担当者は「避難対策の大きな一歩となる。こうした地域の主体的な取り組みはとても心強い」と歓迎し、今後の広がりを期待している。(2020.3.2(月) 10:50配信 カナロコ神奈川新聞)
これからの防災対策は在宅避難を基本として準備することを協会では推奨しています。その理由としては避難指示や勧告あるいは警戒レベルが4または5が出ても現代の日本人は避難しないという実態があります。また、日本の避難所は阪神淡路大震災のときから何も変わっておらず相変わらず災害関連死が後をたたない事実があるからです。であるならば避難しなくてもいい状況を自宅もしくは会社に作るしかないといわざる負えません。逃げなくてもいい家「総合防災住宅」の販売を昨年度から開始しました。マンションにおいてこの記事のように対策設備を進めることはすばらしいと思います。