災害時に避難所となる学校の防災機能の強化が、九州各県で遅れている。非常用の発電機や通信設備、断水時に使える簡易トイレなどの保有率は九州7県とも全国平均を下回り、東日本大震災があった東北や南海トラフ地震が想定される地域との差が目立つ。有識者は、避難所の環境整備は早期避難につながるとして「水害が多い九州でこそ学校と地域が連携した備えが必要だ」と指摘する。
文部科学省の調査(4月1日現在)によると、避難所に指定されている全国の公立小中高校、特別支援学校は計3万360校。このうち、災害時の学校施設の利用計画を定めたのは51・3%だった。衛星電話や無線などの通信設備は8割、備蓄倉庫や飲料水は7割を超えたが、炊き出しに使うLPガスは57・1%、非常用電源は60・9%にとどまった。
地域差もあり、非常用電源では宮城、東京、静岡などで8割を超える一方、九州7県では熊本の47・3%が最高で、大分は19・2%、鹿児島は19・6%と低かった。大分県教育委員会の担当者は「限られた予算の中で校舎の耐震化を優先的にやってきた」と遅れを認める。文科省は8月末、防災設備の導入に関する国の補助制度の活用など防災部局と連携して対策を進めるよう通知を出した。
一方、「地震が少ない地域という認識があった」(佐賀県教委の担当者)などの声もあった。ただ、兵庫県立大大学院の室崎益輝教授(防災計画学)は「避難所の環境整備が早期避難の意識につながる。地震だけでなく水害時にも役立てるという意識を持ってほしい」と呼び掛ける。
また、高齢者や車いす利用者などの利用が想定される学校のうち、体育館に多目的トイレを設置したのは37・3%。バリアフリー化のスロープ設置は体育館63・8%、校舎66・6%と対策は万全ではない。
室崎教授は「学校に全てを押し付けるのでは解決しない。寺や神社、民間企業などへの分散避難を検討するなど、快適に過ごせる避難所のあり方を地域ぐるみで考えなくてはいけない」と話した。(2019.9.10(火) 9:41配信 西日本新聞)
自治体の防災対策の遅れは予算の問題と認識の甘さがほとんどです。そして発災後に必ずといっていいほど出てくるコメントが「想定外」というキーワードです。阪神・淡路大震災から24年・東日本大震災から8年これだけ時間が経過しても意識が変わらない自治体はその体制に問題があります。地域で暮らしている我々は自治体を当てにせず防災対策を進める必要があります。いざというとき自治体は助けてくれません。