「手元に現金がない」災害時の落とし穴…
2018年9月に発生し、震度7を観測した北海道胆振東部地震では、地震の影響で北海道内全域が長期間にわたり停電となった。この際、キャッシュレス決済を利用できずに“買い物難民”となるユーザーが出たのだ。キャッシュレス決済には、ポイントの還元などメリットがあるため、日常生活の支払いをキャッシュレスで完結する人もいる。一方で、災害時には決済システムが機能不全となることもあり、北海道胆振東部地震では、現金のみの支払いを受け付ける店舗が相次いだ。携帯電話の電波に通信障害が発生したことも追い打ちをかけ、キャッシュレスユーザーの多くが「クレジットカードや電子マネーはあるが、現金がない」という状況に陥ってしまった。
このような経験から、ネットではキャッシュレス決済の普及を懸念する声も目立つ。
・資産があってもキャッシュレス手段を持っても、決済する店舗の電源喪失では意味を成さない
・キャッシュレスが流行ってるからって現金を持たないのは、地震大国の日本では危ない
・日本は地震とか台風とか災害が多いからキャッシュレス無理だ
災害などで停電が発生すると、銀行のATMも利用できなくなることがほとんどで、キャッシュレス派でない人にも備えは重要だが、改めてキャッシュレス決済は災害時に弱いのか?そしてキャッシュレスユーザーは、どんな対策をすれば良いのだろうか?
「災害時は、基本的に利用できないと考えておいた方がいい」
――北海道胆振東部地震では、キャッシュレス決済の脆弱性が浮き彫りとなった
キャッシュレス決済に関する現在の取り組みは「完全なキャッシュレス化」を目的としている訳ではありません。現金志向が強い現状を是正することで、企業のコスト削減や消費者の利便性向上などにつなげることにあります。消費者は万が一のときに備え、現金を持つことが重要と言えます。もしも災害が発生した場合は、営業している取引先の金融機関に行くことが対応策となるでしょう。通帳やカードがなくても、本人確認さえできれば、現金を一定程度引き出せる対応をしてくれることがあるからです。避難先など、取引先の金融機関がない場合でも、その他の金融機関が対応してくれることもあります。
――災害の前ではキャッシュレス決済は無力?
災害時にもキャッスレス決済が利用できることはありますが、大規模災害ではそれも厳しくなります。北海道胆振東部地震では、コンビニの「セイコーマート」が車両から電源を補充して店舗を営業をしましたが、キャッシュレス決済までは対応できませんでした。災害時では、基本的に利用できないと考えておいた方が良いでしょう。
――やはり現金の方が安全?
現金にも紛失・焼失・盗難(被災住宅荒らし)といったリスクは存在するため、安全とは言い切れません。そうした点で見れば、キャッシュレス決済はデータがシステム上にあるため、紛失などのリスクは少ないとも言えます。現金を利用するにしても、必要以上に持ち歩かない、タンス預金をしすぎないことなどの、リスク回避策を取ることが必要でしょう。
このほか、災害で被害を受けた場合は、公的な支援制度を活用できるケースもあります。有事の際は市区町村の窓口を訪れ、支援制度の有無などについて相談することをお勧めします。
防災用貯金のススメ
――実際にはどの位の現金を持てば良い?
最低限、外出先から自宅までの交通費と飲食代を持ち歩くことをお勧めします。金額は電車などが利用できなくなることを想定し、タクシーで帰宅できる程度が良いでしょう。より大事なのは、帰宅後、避難や生活の維持に移る準備に使うお金の確保です。災害が発生するとATMが利用できたとしても、数時間待ちの行列ができることがあります。最低でも3~4日、家族で生活できる金額を、防災グッズと合わせて備蓄することをお勧めします。お釣りが不足すると商品を購入できないこともあるため、高額の紙幣だけではなく、500円玉や100円玉などの小銭も用意するべきでしょう。
災害の規模によっては、住んでいる場所が崩壊してしまうケースもあります。多額のお金を持つことで、窃盗などのリスクも発生しますが、お金があることに越したことはありません。一定程度の現金を持つだけではなく、防災グッズと合わせて防災用の貯金をすることをお勧めします。上記したように、大規模災害時には預金の引き出しに対応してくれる金融機関もあるため、そのような金融機関の口座を作っておくことも重要な対応策となります。
災害時にも現金を引き出せる「キャッシュアウト」
大規模災害の前では、キャッシュレス決済で支払いを完結するのは難しそうだ。それでは、現金の携帯以外に、私たちが知っておくべき対応策はあるのだろうか。
企業では対応策として、ATMの代わりに実店舗のレジから現金を引き出せるサービス「キャッシュアウト」を導入する動きもある。キャッシュアウトとは、国内の銀行などで組織する「日本電子決済機構」が運営するサービス。デビットカードを提示し、暗証番号を入力することで利用でき、情報を管理するモバイル端末とレジ側の電原が確保できれば、災害時にも現金を引き出せるのが特徴だ。
災害時におけるメリットはこれだけではない。キャッシュアウトの多くは、当該店舗の商品を購入する目的で利用されるため、店舗側は現金不足となる危険性を抑えた上で、食料品などの在庫を無駄にすることなく提供できる。企業の導入事例は増えつつあり、東京急行電鉄では2019年5月8日から、東急線各駅(一部路線を除く)の券売機を活用したキャッシュアウトを開始した。このサービスでは、銀行の決済アプリで表示したQRコードをかざすだけで、券売機から数万円までの現金を引き出せるという。
日本電子決済機構の担当者は「キャッシュアウトはキャッシュレス決済の弱点を補完できる。買い物と同時に利用できるのも強みだと思う」と期待を寄せる。
このほか、ICカードリーダーサービス「Square(スクエア)」を利用すれば、オフラインの状態でもクレジット決済することが可能だ。このサービスでは決済が仮置きできるため、クレジットカードで商品を購入し、通信環境が復旧した後に本決済を進めることができる。オフライン決済から72時間以内にオンライン環境に戻らなければならないなど、制約はあるが、災害時には強い味方となるだろう。
キャッシュレスユーザ-が抱える災害リスクを減らすためには、「現金の携帯」や「レジからの現金引き出し」など、ある意味では“アナログ的な対応”も重要だった。一方で、災害時でもサービスを利用できる環境を、決済アプリの会社も含めて整えていくことが、キャッシュレス決済の拡大につながるのかもしれない。(2019.5.2(木) 11:36配信 FNNPRIME)
地震が発生した時に役立つのはアナログ対策です。関東大震災では甚大な被害が出ましたが、トイレ問題はクローズアップされていませんでした。その理由は水洗トイレの普及率が低かったからです。社会が成熟し生活が便利になればなるほど発災した時の被害は拡大します。キャッシュレス=お金を持たない生活のことです。ライフラインが止まり停電状態において最後に役立つのは現金だということは間違いのないことです。