2020年東京五輪のセーリング競技会場となる神奈川県藤沢市江の島の「湘南港」を巡り、地震発生から約5分後、会場の大半が津波により水深1メートルに達するシミュレーションデータがあることが明らかになった。
これまで判明していたのは別の想定地震に伴うデータで、浸水は約6~8分後だった。より厳しい想定に専門家は「対策が必要」と指摘する。
新たに判明したのは、神奈川県が津波対策として想定する9の地震のうち、最大波高の津波が最短時間で到達する「元禄型関東地震」に伴うもの。元禄地震(1703年)の再来型で、マグニチュード8.5、江の島で7分後に最大7.3メートルの高さの津波を想定しており、データは毎日新聞が県への情報公開請求で入手した。津波は水深30センチで死者が出始め1メートルで死亡率100%とされる。データによると、気象庁が地震の震度を発表する目安とされる約90秒後、選手やスタッフが艇の出し入れをするエリア=図のA部分=の多くが1メートル以上になり、5分経過すると観客が立ち入る可能性のある地点=図のB部分=の多くも1メートル以上になる。
これまでに判明していた「大正型関東地震」(マグニチュード6.4)に関するデータと比べ、浸水するまでの時間が短い。
元禄型は発生間隔2000~3000年で、大正型は200~400年。東京五輪・パラリンピック組織委員会は「発生間隔などから現実的な判断で大正型を想定し避難計画を立てている」と説明。元禄型は想定していない。しかし9地震は東日本大震災後、県が2014年に選定したもので、自治体による地域防災計画や津波避難計画の前提条件だ。
東北大災害科学国際研究所長の今村文彦教授(津波工学)は「国家を挙げて開催し『復興五輪』を掲げる以上組織委はきちんと対応すべきだ」と指摘。津波避難など危機管理学に詳しい愛知県立大の清水宣明教授は「もともと大正型を想定した組織委の避難計画に無理がある。元禄型なら避難は一層難しい」と語った。【後藤逸郎】
◇トライアスロンでは誘導計画
東京五輪で同様に臨海部で実施するのは他に5競技。このうちトライアスロン、ビーチバレー、カヌー、ボートは東京湾内で開催し、想定地震の津波到達は最短で約86分後。サーフィン会場の千葉県一宮町でも約33分と、避難時間の確保という点で江の島と異なる。トライアスロンは五輪に限らず津波対策に取り組む。横浜市で毎年ある「ITU世界トライアスロンシリーズ横浜大会」では、沿道の3階以上の建物すべてに協力を依頼するなど、全選手、観客を避難誘導する計画を策定している。
元禄型関東地震なら周辺に発生124分後、最大波高3.4メートルの津波が到達する。同大会組織委員会の金子忠彦事務局長は「東日本大震災後に対策を作った。何かあったらどうするのか? 疑問に答えを用意するのが主催者の責任だ」と話した。【後藤逸郎】(2019.4.18(木) 6:30配信 毎日新聞)
東京五輪と人の命を比べるまでもありません、人命第一の平和の祭典のはずです、疑問を投げかけられたら真摯に向き合い、その場しのぎの回答ではなく、真剣に命を守る対策を用意しておく必要があります。人が亡くなってからでは遅いのですから!!