東日本大震災から8年過ぎても、3.11が近づくと流れる津波の映像は、何度見ても恐ろしい。
本当の怖さは実際に体験した人でないとわからないとはいえ、南海トラフ地震で関西などで予想される津波にもしっかり備える必要がある。そこで津波避難のシミュレーション装置のある「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」で津波の疑似体験に記者がトライすることとなった。
「人は地震や津波のような天災が起きたらどうしようと想像すると、心理学でいう“予期不安”が際限なく広がりがちですが、逆に実際に近い状況に接すると意外にパニックにならず冷静に対処できるということが実はあるのです。そういう意味では『案ずるより生むが易し』の疑似体験はトレーニングとして有要です。ただ、津波体験で心に傷を負ったPTSDの人は、疑似体験でフラッシュバックが起こる可能性もあり、こうした施設を訪れる際は充分に注意すべきです」
もともとこのセンターは、阪神・淡路大震災の経験と教訓から、防災・減災に必要な知識を身につけてもらうために造られた防災学習施設。そこに、昨年8月の一部リニューアルで登場した津波避難体験装置は、最大5人が同時体験できる国内初の大型シミュレーターとしても注目されている。
直径約7mの半円形巨大スクリーンに津波の映像が流れ、足元に津波が押し寄せ徐々に動けなくなるという疑似体験ができるシミュレーション装置は、連日長蛇の列ができるほどの人気ぶり。
実際には、両側に手すりがついた2mほどの歩行装置の上を歩くものだが、靴の上から圧力のかかる装置を装着し、記者もいざ体験スタート! ドキドキしながら待っていると、「地震が発生しました。腰を低くして安全な場所に避難してください」というアナウンスが。その後、すぐに津波が押し寄せてきて、スクリーンには町が水没していく映像が映し出される。まだ足元までは水がきていないが、避難タワーまで逃げるというシミュレーションが始まる設定だ。さっそく前へ進もうとしても、サンダル状のものを履いているため足を上げられず、すり足で進むしかなく、これだけでもちょっと恐怖だ。最初は手すりを持たなくても前へ進めたが、水の深さが10cmになる頃には、手すりを持たずに前へ進もうとすると転びそうになる。6分後に水深が30cmになると足がまったく前に出ず、手すりにつかまって立っているのがやっとだ。
「成人男子の私でも、水深が10cm程度の深さになると前にまったく進めなくなりましたから、女性や子供にとっては、非常につらく、危険なはずです。水圧がかかった水の中を歩くのがいかに大変か、身にしみてわかりました」(西宮市から訪れた親子連れの父親)こうして約7分の津波避難体験は終了。体験前は深さ10cmぐらいなら歩けると思っていたのに、水圧がかかると1歩も歩けず、焦れば焦るほど足がすくんでしまう。津波の脅威をつくづく思い知った。(2019.4.5(金) 16:00配信 NEWSポストセブン)
津波は普通の波とは違い、水全体が動いていることで想像を絶する力を秘めています。たかが10cmでも本当に動けなくなります。疑似体験とはいえ恐怖を感じます。海の近くにお住まいの方は地震発生=津波と考えて、すぐに避難できるように日ごろかに避難場所や避難経路を確認しておきましょう。