最大震度6弱を観測した大阪北部地震から18日で半年。大阪府では駅周辺に人が滞留する「帰宅困難者」問題や訪日外国人(インバウンド)への対応、鉄道運行状況の情報発信などさまざまな課題が浮上した。なかでも帰宅困難者対策は、東日本大震災を経験した首都圏と比べて対策が進んでおらず、府は地震の教訓を踏まえ、災害の発生時間帯に応じたルールをガイドラインに盛り込むなど対策に乗り出している

■一斉帰宅呼びかけず

帰宅困難者対策をめぐっては、国や東京都が東日本大震災後の平成24年に首都直下地震を想定した企業向けガイドラインを公表。南海トラフ巨大地震で最大約146万人の帰宅困難者が出るとされる大阪府では、平成27年に帰宅困難者対策ガイドラインを策定していた。

しかし、ガイドラインでは災害発生時間を「就業時間帯」に想定。月曜日の午前7時58分という通勤時間帯を直撃した大阪北部地震では、大阪府による出社や帰宅抑制の一斉呼びかけは行われなかった。当時、従業員を自宅待機させる企業がある一方、出社か待機の判断を従業員に任せたケースもあった。交通機関も一時まひし、夕方には大阪市中心部と北部を結ぶ新淀川大橋を徒歩で渡る人の行列ができたほか、鉄道の運行情報を求め、駅周辺でも一時的に人が滞留するなど混乱した。

■時間帯に応じた対策を

これを教訓に府は9月、ガイドラインを改定。災害発生時を通勤、就業、帰宅の3パターンに分け、企業や事業所が原則とるべき基本ルールを定めた。これに加え、災害発生後3日間は従業員が職場内で待機できるよう食料や簡易トイレなどの備蓄の確保や、帰宅時間が集中しないよう平時にルールを決めておくなども要請。経済団体などを通じ、各企業の防災計画に取り入れるように呼びかけている。

一方、大阪市でも災害時に民間企業に出社や帰宅を抑制するよう求める「非常事態宣言」制度の導入や主要駅周辺での情報発信の拠点整備などの対策を進めている。

■タイムライン策定

8府県と政令市で構成する関西広域連合では災害発生直後から1週間後までを想定し、帰宅困難者が帰宅するまでに各機関が取るべき行動を時系列でまとめた指針「オペレーションマップ・タイムライン」の策定を進めており、今年度中にまとめる方針だ。19日には関係機関約40人が参加する図上訓練を初めて実施、近距離の徒歩帰宅者への情報提供の方法や、帰宅抑制後のバスでの代替輸送の対応手順などについて議論する予定。

大阪・ミナミのまちづくり団体「ミナミまち育てネットワーク」は、地元の南海難波駅前で整備が計画されている「駅前広場」について、防災機能の強化を提案。大型ビジョンやスマートフォンを充電する電源の設置などを提言した。

同ネットの米田亜希さんは「インバウンドで観光客が増える中、駅前の混雑は大事故につながる危険性もある。災害時に旅行者への安全対策ができていれば、街の評価を高めることにもつながる」と話している。(2018.12.18(火)20:59配信 産経新聞)

東日本大震災から7年も経過しているこの時点において、帰宅困難者対策を改めて見直している自治体があるという現実、自治体の課題は危機管理室等に配置されている職員のスキルレベルにあります。3年から5年サイクルで配置転換を繰り返し、その部署やスタッフに知識やスキルが蓄積できません。その結果として発災時にどの様なことが起こるのか、あるいはどの様な課題があるのかを想像できないのです。想像できなければ対策を講じることはできません。大阪府が平成27年に策定していた帰宅困難者対策ガイドラインが全く機能しなかったことがまさしく想像力の欠如により起こるべきして起こった人災なのです。人材ローテーションは必要な仕組みであることを否定するつもりはありませんがそれが理由で部署内に知識とスキルが蓄積できない事は重大な課題である事を自治体は知る必要があります。