地震や台風、豪雨などの自然災害や、新型コロナウイルスをはじめとした感染症などのリスクに直面するなか、企業には事業資産への影響を最小限にとどめ、事業の継続や早期の復旧が求められている。そのため、さまざまなリスクに対する企業活動への影響を想定し、発生後の対応措置などを事前に準備しておくことは、事業の継続のみならず企業価値の維持・向上の観点からも重要となっている。 そこで、帝国データバンクは、事業継続計画(BCP)に対する企業の見解について調査を実施した。

BCP策定企業は16.6%と年々増加傾向に

自社におけるBCPの策定状況について尋ねたところ、「策定している」企業は16.6%となり、前回調査(2019年5月)から1.6ポイント増加した。また、「現在、策定中」(9.7%)、「策定を検討している」(26.6%)もそれぞれ増加となった。『策定意向あり』(「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」の合計)とする企業は52.9%(同7.4ポイント増)で調査開始以降最も高くなり、年々増加傾向がみられる。 規模別でみると、「大企業」は30.8%がBCPを策定しており、全体(16.6%)を大きく上回っている。一方、「中小企業」では13.6%、とりわけ「小規模企業」では7.9%で低位にとどまっており、BCPの策定状況は企業規模で大きく差が表れる結果となった。 BCPを『策定意向あり』とした企業を都道府県別にみると、「高知」(79.2%)が2019年調査(72.5%)に続きトップ。今後大地震の発生が予想される地域において、BCPの策定に積極的である傾向がみられた。 企業からは、「2019年に自然災害が多発したことで、ユーザーからの要求で作成した」(鉄鋼・非鉄・鉱業)や、「今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、改めて平時において検討しておくことの重要性を認識した」(電気メッキ)といった声があがっている。

想定するリスクは「自然災害」がトップも、「感染症」が急増

BCPを『策定意向あり』(「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」の合計)とする企業に対して、どのようなリスクによって事業の継続が困難になると想定しているか尋ねたところ、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が70.9%となり、前年に続いて最も高かった(複数回答)。 他方、新型コロナウイルスの影響が広がるなか「感染症」(69.2%)が、前年から44.3ポイント増と急増した。「取引先の倒産」(39.0%)も同8.7ポイント増と、新型コロナウイルス関連倒産が増加するなか、事業継続のリスクとして上位にあがっている。 想定するリスクに関する上位3項目を規模別でみると、「自然災害」では大企業が中小企業よりもおよそ10ポイント高くなっている一方、「感染症」は企業規模を問わずリスクと想定していた。また、「取引先の倒産」は小規模企業でその割合が高く、「新型コロナウイルスの影響が長引き産業界に激震があった場合、どこが倒産するか予測できず、中小企業は大混乱になりかねない」(プラスチック製品加工)などの声がみられた。

BCPを策定していない理由、策定の難しさや人材、時間、費用の問題も

BCPについて「策定していない」企業にその理由を尋ねたところ、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が41.9%で最も高かった(複数回答)。次いで、「策定する人材を確保できない」(28.7%)や「書類作りでおわってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」(28.6%)、「自社のみ策定しても効果が期待できない」(23.6%)と続いた。前年と同様の理由が上位にあげられており、BCP策定に向けた課題の解決が進んでいない実態がうかがえた。 特に中小企業からは「BCPの重要性は十分理解できるが、日々の稼働が大切で策定する余裕がない」(一般貨物自動車運送)や「あれば良いと思うが、様々な場合を想定し予め策定する余力がなく、発生後状況に合わせ可能な対応をせざるを得ない状況」(貸事務所)、「必要とは考えているが作成のノウハウがない」(医療用機械器具卸売)など、BCPの必要性を感じながらも策定の難しさを指摘する声が多くきかれた。

BCPの策定は新型コロナウイルスの影響で進む可能性も

地震や台風、豪雨などの自然災害に加え、2020年に入り新型コロナウイルスの影響が全国に拡大し経済活動が大きく制限されるなど、脅威となるリスクが顕在化している。そのため、事業継続や早期復旧を目的としたBCP策定の重要性は、これまで以上に高まっている。 BCPを策定している企業は緩やかな増加傾向にある。企業からは、「これまではBCPについて考えたことも無かったが、今回の新型コロナウイルスの影響や今後予想される自然災害を考えると策定の重要性を大いに感じる」(製缶板金)や「新型コロナウイルスの影響を受けて、自社の課題が鮮明になった。非常時に事業を止めないための計画を考えていきたい」(不動産管理)といった声が多くあげられた。今回の新型コロナウイルスを契機とし、多くの企業でBCPの策定が従来以上に進む可能性がある。(2020.6.16(火) 8:04配信 帝国データバンク)

BCP策定は企業が災害発生後、事業を継続するためには必要なものです。しかしながらその策定進捗率は中小零細企業はにおいては0%という現実がありました。今回のコロナの影響もありその策定進捗率が向上することに期待しています。