災害時、避難所で性被害に遭いやすい女性や子どもをどう守るか-。

2016年の熊本地震などで被害が報告されたのを受け、対策が進みつつある。熊本県南部などを襲った豪雨では、居住スペースを間仕切りで分けるなど工夫も見られたが、新型コロナウイルス対策との兼ね合いで限界も浮かんだ。

豪雨から4日で2カ月。誰もが安心できる避難所づくりの模索が続く。

「女子トイレの個室から出てきたおじさんと遭遇して、びっくりした」。30代の女性はこう振り返る。8月上旬、県内の避難所でのことだ。居住空間は高さ2メートルの間仕切りでプライバシーは確保されたが、女子トイレの入り口ドアは開けっ放しで誰でも入れた。共有スペースも男女の区分けはなく、女性は「不安でしたね」と打ち明けた。

 豪雨は7月4日未明に発生。内閣府は6日、避難所運営の指針を守るよう県に伝えた。間仕切りの活用、授乳室・乳幼児エリアの設置など50項目に及ぶ指針のうち、県は「男女別トイレ、女子更衣室、授乳室」の三つを必須とし、関係自治体に連絡。性被害の相談機関の連絡先を記した注意喚起のポスターなど4千枚超を全避難所に配り、県警は最大8人の巡回部隊で警戒に当たった。

相談窓口を設置した八代市では、担当の女性が生理用品と下着を配った。地震時はできなかった対応だ。

当時、内閣府の調査では、女子更衣室や授乳室は4割が未整備だった。「指針を十分守れなかった反省を生かさなければいけないとの危機感があった」と県男女参画・協働推進課の木村和子課長。8月上旬には全避難所に整備された。

悩ましかったのは、コロナと豪雨が重なったこと。3密回避で居住空間を広くしたため、一部では男女別の休養場所が確保できなかった。

熊本地震では8件の性被害が確認され、被災から半年以上経過して発覚した事例もあった。県警などによると、豪雨災害での被害相談は今のところない。だが県の性暴力被害者の支援団体は「被害を口にするのは勇気がいる。すぐに表に出るわけではない」と話す。

避難所の運営担当は男性が多く、女性は少ない傾向にある。

「女性の声をすくい上げやすくするため、運営に関わる女性を増やすべきだ」と提言するのは、阪神大震災の当時から支援を続けるNPO法人「ウィメンズネット・こうべ」の正井礼子代表だ。

国連人道問題調整室(OCHA)などは、被害者支援や救済の仕組みの重要性を指摘する。海外では性暴力対応の研修の受講が、避難所運営に関与する条件になっているケースもある。

男女共同参画の視点で防災・減災を研究する静岡大教育学部の池田恵子教授によると、看護師やボランティアら支援する側の被害も起きている。

池田教授は「予防の取り組みは進みつつあるが、被害後の対応はまだ不十分。避難所運営に関わる全ての人が、予防と対応策を考えるべきだ」と強調した。(2020.9.4(金) 11:26配信 西日本新聞

避難所での性被害は阪神淡路大震災のときも残念なことに発生していました。大規模災害が起こり避難所生活が長期化すると必ずといっていいくらい性被害は発生しています。避難所運営が男性目線で行われていることも大きな要因だと思います。女性目線の運営が必要です。コロナ禍で分散避難や在宅避難が推奨されていますが、状況や事情によってどうしても避難所に行かざる負えない人もいます。残念なことではありますが性善説ではない性悪説に基づいた運営ルールが必要です。