「3密をどうやって解消すべきか」-。5月16日、県南を中心とする大雨で、山間部の14世帯25人に避難勧告を出した、熊本県あさぎり町の担当者は悩ましげだった。
世界的にまん延する新型コロナウイルス。感染防止のためには、密閉、密集、密接の「3密」の回避が不可欠だからだ。
同日の避難勧告は午前11時すぎから1時間半で解除。旧分校など避難所2カ所に避難した住民はいなかったが、「広範囲に避難を勧告していたら、3密を回避するには避難所の面積では不十分だった」。
大規模な体育館の避難所活用を検討しているが、「感染リスクをゼロにするには限界がある」と漏らす。
国は4月、避難所での新型コロナ感染防止対策について都道府県に通達。
「可能な限り多くの避難所を開設する」
「症状が出た人の専用スペースを確保する」
などの具体策を示した。
避難所での感染拡大を防ぐため、安全ならば自宅や親族、知人宅への避難を検討するよう周知を求めた。
「新型コロナに限らず、避難所での感染症対策の重要性は以前から指摘されていた」と熊本大大学院の竹内裕希子准教授(地域防災)。コロナ禍を背景に消毒液など衛生物資が不足し、県外から十分な支援が受けられない場合もある。
「避難所で手の清潔すら徹底できないかもしれない」と危機感を募らせる。
食料や飲用水、頼れる避難先の確保など、自ら備える「自助」を心掛け、避難所への集中を分散することができれば、「避難所しか頼れない高齢者などの3密が解消できる」と指摘する。
住民の意識にも変化がみられる。東京都のNPO法人「環境防災総合政策研究機構」が4月、熊本や東京など15都道府県約5200人を対象に災害時の避難行動を調査した。
新型コロナ感染拡大前の避難先は
(1)自治体指定の避難所
(2)自宅の2階など
(3)親戚や知人宅
(4)避難所などの駐車場で車内で過ごす-といった順だったが、
現在は7割強が「新型コロナが避難行動に影響する」と回答。
避難先は
(1)車中泊
(2)避難所の混み具合など状況を見て避難先を変更
(3)感染防止対策をして避難所へ
(4)避難所に行かない-などの順で、違いが浮き彫りになった。
担当した作間敦研究員は「新型コロナの感染拡大で、住民の避難行動の多様化が予想される。
市町村は、避難所以外に避難した住民の所在確認や、増加が予想される車中泊避難者の健康対策など、新たな対応が求められる」と警鐘を鳴らす。
私たちの日常は、新型コロナの感染拡大で大きく様変わりし、防災対策にも影響が及ぶ。これから本格化する梅雨を前に、感染防止と避難対策を両立する観点から、コロナ禍での防災を考える。(2020.6.22(月) 10:07配信 熊本日日新聞)
コロナの影響で避難する場所に大きく変化が生まれました。現在の避難所は3密状態を回避するための対策がいろいろと検討されていますが、いざ災害が発生した場合にどうなるのかは誰にもわかりません。避難所以外の避難場所については日頃から検討しておく必要があります。