「家を買わなければよかった」と思う瞬間の1つは、自然災害で家が被災したときです。たとえ命が助かったとしても、住む家や働く場所を失い、住宅ローンの返済が困難になることは起こりえます。
これからの生活に不安になった人がFP相談に見えたとき、口にする後悔は主に3つに集約されます。「被災前に滞納していなければ」「火災保険にしっかり入っていれば」「ハザードマップを確認していれば」……いずれも、いざ被災してから気づいたのでは手遅れながら、前もって対応していれば後で悔やむのを多少なりとも防げるでしょう。今回は、これから住宅購入を考える人に生かしてほしい、先達から学ぶ3つの教訓をお伝えします。
■返済を滞納していると救援策は適用対象外に
被災してケガをしたり思うように働けなくなったり仕事を失うと、日々食べていくだけでも四苦八苦に。後回しになった住宅ローン返済が滞り、最終的に破産や再生といった法的手続きを取ることになる可能性は誰にでもあります。このとき、手元にある蓄えは借金と棒引きされてほとんど残らない中、個人信用情報には法的手続きを取ったことが登録されて、生活再建のための資金が借りられなくなる可能性があります。けれども、まだあまり知られていないのですが、返済困難になった理由が“大規模な自然災害”という場合には、「自然災害債務整理ガイドライン(正式名称:自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン)」の適用があるので要チェックです。借入先(銀行など)との話し合いによって、ローンの減額や免除を受けられる可能性があるのです。
これは2016年4月から運用が始まった制度です。災害救助法の適用を受けた自然災害で住宅ローンの返済が難しくなった場合に、災害後の世帯年収730万円未満、ローン返済額と新しい住居の負担が年収の40%以上であるなどの一定の条件を満たし、その自然災害で収入が減少したなどの理由により被災前ローンの支払いが困難になったと認められたときに適用される仕組みです。この制度の適用を受けられれば、住宅ローン返済に関し減免が受けられるばかりでなく、個人信用情報にも登録されないため、新たな借り入れをする際に影響が出ないメリットも。災害に遭った人へのサポートという形のため、弁護士などの専門家に無料で相談でき、住宅ローンの借入先の金融機関との話し合いのサポートも無料でしてもらえます。
まずは、住宅ローンの借入先(銀行など)にこの制度による手続き着手を申し出て「同意書」を発行してもらい、その後に地元の弁護士会などへ手続き支援依頼をする流れです。制度の詳細は政府広報オンラインで確認を。
ただし、ほぼ要件を満たしていながら結局適用を受けられなかった残念なケースがあることには留意しておきたいところです。「被災前にすでに住宅ローン返済を滞らせていた」といった場合、ほかの要件を満たしていても適用は難しい現状があります。義務を怠っていると救援策は受けられない点には留意しておきたいところです。
■火災保険は入っているだけではダメ
自然災害で被災したときの生活再建の3大軍資金は、①火災保険と②「被災者生活再建支援法」による支援金、そして③義援金が挙げられます。この中で、一番早く手にできて確実なのは、火災保険からの保険金です。ところが、「きちんと保険契約を更新していなくて無保険だった」「水災の補償を付け忘れていた」「家を建て直しできるだけの金額で契約していなかった」というケースが散見されています。
実は、火災保険には保険会社ごとでさまざまなプランがあり、手厚さによって保険料にも差があります。見積もり依頼をすると、フルカバーのプランが最も保険料が高く、補償を減らして入りやすくしたエコノミープランなどもあわせて提示されるのが通常です。そのため、つい“節約”しすぎて、その家に必要な補償が漏れたプランを選んでしまい、いざというときに役に立たない入り方となっているご家庭は少なくありません。
例えば、“水災”の補償ありのプランの保険料は、補償なしのプランのおよそ3~5割増しです。となると、「マンション暮らしだから」「近くに川がないから」といった理由で“水災”の補償を不要と考える人もいますが、内水浸水が起こったり川から離れた立地でも土砂災害の被害に遭った家も報道で目にしたのではないでしょうか。
火災保険を選ぶ際には、松・竹・梅といった3種類程度のプランが提示されるのが通常ですが、どこでどんな被害に遭うかわからない昨今では、「こんなはずではなかった」の声が「竹」「梅」プランで大量発生中です。保険料負担を重く感じるかもしれませんが、せっかく”もしも”に備えるのであれば「松」つまりフルカバーの補償が安心です。住まいは暮らしの“礎”ですので、その補償はケチらないのが無難です。
住宅購入時はさまざまな手続きがあり、くたくたな中で続けて保険の手続きをするケースが多く、ついいい加減になりがちですが、せめて、どんな補償内容なのかは契約時にしっかり確認するのがお勧めです。ちなみに、持ち家のご家庭の火災保険は、「家財」の補償が抜けているケースが少なくありません。火災保険は、保険を付ける対象として「建物」と「家財」の2つに分かれていて、住宅ローンを組むときは、借入先の金融機関から「建物」の火災保険については入ることを求められるからです。というのは、住宅ローンは建物に抵当権を設定して貸し付ける有担保ローンのため、建物がなくなってしまうと金融機関も困るからです。逆に言えば、「家財」の火災保険は手つかずな人が多いので、もしもの被災時の生活再建のための軍資金にゆとりを持たせたいなら、「家財」の火災保険に入っておくのも1策です。
■ハザードマップは要チェック
もう耳にタコかもしれませんが、これから住宅購入に踏み切るときは、最後の決め手として「ハザードマップ」の確認がお勧めです。
本命の物件の絞り込みが進んできた段階で、一度、ハザードマップポータルサイトで災害リスク情報を確認しておきましょう。場所を入力すると、洪水・土砂災害・津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ちなどを地図や写真に自由に重ねて表示できる「重ねるハザードマップ」のほか、各市町村が作成したハザードマップへリンクして地域ごとのさまざまな種類のハザードマップを閲覧できる「わがまちハザードマップ」を確認できます。
この秋の相次ぐ台風被害でも、ハザードマップのとおりに被害が出た地域が少なからずありました。もしものときの危惧を減らす1策として視野に入れておいてはいかがでしょうか。(2019.11.19(火) 5:25配信 東洋経済ONLINE)
災害に対する準備は様々です。ハード対策・ソフト対策・意識向上対策、どのようなリスクがあるのかを知ることが、どのような対策をすればいいのかを導き出すヒントです。その上で知識を持つことが重要です!!