2008年北京オリンピックの3カ月前、5月12日に四川大地震(M8.0)が発生した。

震源地は四川省中部の龍門山断層。広い地域で震度6弱~6強の揺れを観測。死者・行方不明者は8万7419人、建物損壊436万棟、避難者は1514万7400人に上った。

◆北京五輪前に四川大地震
2週間後に現地調査に入ったが、人工衛星でないと全体が把握できないほどの広域大災害だった。北京から2000キロ離れているとはいえ、想像を絶する甚大被害に、オリンピック開催が危ぶまれた。

当時、国際オリンピック委員会(IOC)のジャック・ロゲ会長は、胡錦濤国家主席に「この困難な時期にはオリンピックがあなた達の味方になります」とのエールと、100万ドル(約1億1000万円)を贈った。6月に予定されていた四川の聖火リレーは延期され、8月8日の開会式直前に避難所の体育館内で行われた。

1年を過ぎて再度、現地に行くと、避難所周辺は軍の防疫部隊が出動し、厳戒態勢が敷かれていた。09年春からH1N1新型インフルエンザがまん延し、6月に世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的流行)を宣言したからである。中国の政府関係者は「もし昨年(08年)、パンデミック宣言が出されていたら、北京オリンピックは中止せざるを得なかっただろう」と話していた。

◆多数の災害関連死
新型コロナウイルス・パンデミックの今、もし大地震が発生したら、避難所などで多数の災害関連死が出る危険性がある。

25年前の阪神・淡路大震災の時も、季節性インフルエンザが流行していた。兵庫県の犠牲者6402人のうち、3カ月以内に震災関連死と認定された人は919人(14.35%)に上る。死亡主因別では、循環器系疾患、呼吸器系疾患、既往症悪化で、全体の約93%を占める。大半はインフルエンザが引き金になったものと推定されている。

高齢者が感染症に見舞われると、合併症などで重篤になりやすい。妊産婦、基礎疾患のある高齢者、ハイリスク患者などの「感染弱者」を密集空間の避難所に押し込むことはできない。感染弱者は、一般避難者と分け、被災地外の施設や福祉避難所などに収容すべきだ。

大地震が起きる前に、感染症まん延時の災害医療体制の構築と避難所運営マニュアル策定が急務である。1964年東京オリンピックの4カ月前に新潟地震が発生。しかし、その時は感染症の流行がなかった。

◆「在宅避難」がお勧め
2016年の熊本地震では、地震による直接死は50人だったが、その後の避難生活中に亡くなり、関連死と認定された人は220人に上る。

避難所に避難した60代男性は日記に「臭くて汚いトイレが1時間待ち、板の間に毛布1枚では痛くて寒くて眠れない」と書いていた。その男性は、4日目に高熱を発して病院に搬送され、急性肺炎と診断された。

昨年の台風19号では、満員で入れない避難所が続出した。もし今、大地震が発生すれば、多数の避難者で同じことが起きるだろう。発災直後の避難所は劣悪環境である。できれば、避難所に避難しなくていいように、安全な家にする(住む)ことも大切だ。そして、電気、ガス、水道、電話を使えないと仮定し、1~2日暮らす「在宅避難生活訓練」をお勧めする。本当に必要なものが見えてくるし、備蓄は7日分の意味が理解できる。(2020.3.29(日) 9:31配信 JIJI.COM 時事通信) 

もしこのタイミングで地震等の災害が発生し避難所に行く事態となったら…避難所でコロナウイルスのクラスターが起こることは確実でしょう。それを回避するために必要なことは日頃から防災意識を持ち備えておくことがポイントです。在宅避難できる状況にあることが重要なのです。