昼夜を問わず発生する災害に対応しようと、夜間の発災を想定した防災訓練が注目されている。

最近でも熊本地震(平成28年4月)や北海道胆振(いぶり)東部地震(昨年9月)などは夜間~未明の時間帯に発生。ただ、日中に比べて訓練中の事故などのリスクがあり、普及には課題も残る。

「けがをしないことが大切。枕やタオルケットで頭を守ってください」。2月22日夜、池袋防災館(東京都豊島区)に集まった防災体験ナイトツアーの参加者に解説員が呼び掛けた。同館では夜間を想定した防災体験ツアーを昨年4月に常設した。全国各地にある防災体験館の中で初めての試みだ。

館内の地震体験コーナーにある地震発生装置の上に布団や枕が置かれ、参加者は寝た状態で震度6強を、座った状態で東日本大震災や関東大震災級の震度7をそれぞれ体験した。揺れが発生すると「うわっ」「すごい」と声が漏れ、態勢を崩さないようにするので精いっぱい。体を床から120センチまでの高さにかがめないとアラームが鳴る仕組みを備えた煙体験コーナーでは、参加者は不自由な姿勢のまま、誘導灯のみを頼りに真っ暗な廊下から出口を目指した。

参加した会社員の若杉高志さん(48)は「いざというとき適切に行動できるか不安になったが、どう対応できるか改めて学べてよかった」と話した。同館では毎週金曜日にこうした夜間ツアーを行っており、2月末までに延べ1540人が参加した。防災館の金田正史館長は「一日の睡眠時間を8時間とすれば、地震などの災害は3分の1の確率で寝ているときに起きる。夜間の状況をできるだけ忠実に再現した」と述べた。

神戸大の室崎益輝名誉教授(防災計画)によると、夜間に発生する災害への対応が議論されるようになったのは、東日本大震災がきっかけだ。防災関係者の間で、「仮に津波が夜に発生していれば、さらに逃げ遅れが出た可能性がある」と話題になったという。

対策に動き出した自治体もある。神奈川県鎌倉市は26年、夜間の津波発生を想定して蓄光型の路面シートやソーラー蓄電式の照明、避難誘導標識などを導入し、夜間に実証訓練を実施。三重県鳥羽市では27、28年度に全地区で夜間津波避難訓練を行った。

ただ日中に比べて周りが見えづらいため事故の恐れがぬぐえず、自治体が及び腰になる傾向があるという。室崎名誉教授は、「避難に時間がかかったり見えないことによる恐怖感など昼と夜では全く状況が違う。まずは夜間に避難経路を歩くだけでも、色々な問題が見えてくるはず」と、対策の必要性を指摘している。(2019.3.23(土) 19:09配信 産経新聞)

地震は時と場所を選んでくれません。夜間に発生した場合、停電により真の闇に包まれた中で自分の身を守り、その後家族の安否確認活動を行う必要があります。どんな状況においても対応できるように日ごろからの準備は大切さです。