地震で被災した場合、生活再建のよりどころとなるのが地震保険だ。2011年の東日本大震災などをきっかけに加入率は上がったものの、3世帯に1世帯にとどまり、地域差も大きい。現在、保険料は引き上げの局面にあり、家計負担の重さに目が向きがちだが、それだけ地震リスクが積みあがっていると考えよう。

◇「地震で火事」で火災保険金は下りない

地震保険は、地震、噴火やそれによって発生した津波による建物・家財への損害を補償する。誤解している人もいるが、地震で住宅が火事になっても火災保険では補償されない。地震保険は火災保険では補償されない地震のリスクに備えるものだ。このため単独では加入できず、必ず火災保険に付帯(セット)して契約する。保険金額は最大で火災保険の50%で設定され、建物は5000万円、家財は1000万円が上限だ。

地震保険は1964年の新潟地震を教訓に66年にできた。加入率は阪神大震災の起きた94年度はわずか9%で、その後伸びているものの18年で32%。しかも、地域差が大きい。最も高いのは宮城の52%で愛知、熊本が続く。最も低いのは沖縄16%で、長崎、島根も2割を下回る。地震の被災地でその後に加入率が高まり、逆に、最近大きな地震が起きていない地域で低いままになっている傾向がある。「将来のリスクに備える」という保険本来の意味あいとはズレがありそうだ。

火災保険を新たに契約した人が地震保険にも加入した割合(付帯率)は18年で65%。火災保険を契約する場合、地震保険は「原則付帯」となっており、加入したくない場合のみ、付帯を外せる仕組みだ。つまり3人に1人は「あえて入らない」選択をしている。付帯率も地域差が大きい。最高は宮城の87%で、最も低いのは長崎の50%だ。

◇国予測に基づき保険料を決める

損保会社でつくる損害保険料率算出機構の調査によると、地震保険にあえて入らない理由のトップは「保険料が高いイメージがある」で、4分の1が挙げた。確かに保険料率(保険金額に対する保険料の割合)は引き上げが続いている。90年代から住宅の耐震性能が向上したことを理由に引き下げられてきたが、14年は18年ぶりに引き上げとなり、さらに17年1月からは3段階で引き上げの最中。2回目は19年1月、3回目は21年1月の見通しだ。2年に1度の値上げとなり、メディアは家計負担を取り上げがちだが、重要なのは、引き上げの理由を考えてみることだろう。地震保険の保険料率は、国の作成する「全国地震動予測地図」に基づき、損害保険料率算出機構が保険金の支払額を想定して、算出している。現在進められている料率アップは、14年末の予測で南海トラフなど大地震の発生確率が各地で高まったことを反映している。つまり、将来の地震被害がこれまで考えていたよりも大きくなるという予測に基づいている。

◇地域差は「地震発生確率」だけではない

保険料率は、建物がある都道府県、建物構造、耐震性によって異なる。コンクリート造りや鉄骨造りの建物でみると、保険金額1000万円当たりの保険料は、一番安い岩手など20県は7100円だが、最も高い東京、神奈川、千葉、静岡の1都3県は2万5000円と3倍以上だ。保険料の地域差は、地震発生確率を示しているのではなく、その住宅が地震で被る損害の大きさを反映している。保険料が高いほど、損害を受けるリスクが高いことになる。高いといって加入を避けるのは、正しい選択とはいいにくい。また、最近大きな地震が起きていないからという理由も根拠が乏しい。全国地震動予測地図は全国どこでも強い揺れが襲う可能性があることを示しているからだ。

地震で自宅が全壊したとしても、公的な支援は最大300万円に限られる。地震保険は保険金の上限が火災保険金額の50%であり、住宅を再建するには厳しいかもしれないが、生活再建には大きな手立てとなることを考えよう。(2019.11.23(土) 9:30配信 毎日新聞)

地震保険は日本特有の制度です。諸外国もその保険制度を勉強に来るくらいです。被災者生活再建支援制度は地震などの自然災害により、10世帯以上の住宅が全壊した市区町村などの被災世帯に対して、国と都道府県から支援金が支給される制度です。その内容は基礎支援金100万円と加算支援金200万円です。住宅が全壊・半壊したことで新たに住宅を再建・購入した世帯に支給されるものです。生活再建には資金が必要です。地震保険の加入をご検討ください。