河北新報社と東北大災害科学国際研究所による台風19号豪雨の被災者アンケートで、自宅に浸水や土砂災害の被害が出ると「思っていた」「どちらかといえば思っていた」との回答は、宮城県北の大崎市鹿島台68.0%、大郷町46.0%だったのに対し、県南の丸森町は23.3%にとどまった。災害リスクの認識にも大きな地域差が見られた。
■県北 高い意識
台風19号襲来前の認識として、浸水想定区域や土砂災害警戒箇所を示したハザードマップについて尋ねたところ、「見て内容も理解していた」との回答は3地域いずれも4~5割で差はなかった。一方、事前に被害が出るとの認識はグラフ上のように、県北と県南で結果が分かれた。避難場所を決めていたかどうかの回答はグラフ下の通り。「決めていた」「なんとなく決めていた」は大崎市鹿島台が96.0%、大郷町が88.0%と高く、丸森町は半分以下の40.4%だった。3地域はいずれも幾度も洪水に見舞われた水害常襲地。過去の水害の認知度を聞いたところ、3地域とも2015年の関東・東北豪雨や1986年の8.5豪雨を知る人は多いが、県北では終戦間もない1947年のカスリン台風と48年のアイオン台風も覚えている人が少なくなかった。
■無線聞こえず
台風19号の情報入手手段(複数回答)はテレビが84.8%で最多、携帯電話・スマートフォンが50.5%だった。地域別に見ると、防災無線(屋外拡声器)で情報を入手したとの回答は大郷町36.0%、丸森町と大崎市鹿島台は8%台。一方、防災無線(屋内・戸別受信機)は大郷町66.0%、鹿島台32.0%に上った。大郷町はラジオ型の戸別受信機を町内全戸に配布。町は10月12日、遠隔操作でスイッチを入れ、大きな音量で避難を呼び掛けた。丸森町の自由記述では「(屋外の)防災無線は雨で全然聞こえなかった。戸別受信機があれば分かった」(55歳女性)との意見が複数あった。
■災害弱者課題
当日に避難しなかった理由(複数回答)は「浸水するとは思わなかった」が64.3%で最も多かった。「すでに夜だった」「どこに避難していいのか分からなかった」が各23.8%などと続いた。自由記述には「高齢者の1人暮らしで車がないと避難できない」(大郷町の80歳女性)、「寝たきりのお年寄りを抱え、避難できなかった人もいる」(大崎市鹿島台の66歳男性)との声もあり、東日本大震災同様、災害弱者の避難に再び課題を残した。
【解説】台風19号豪雨に関する被災者アンケートでは、台風襲来当日に自宅上階への退避を含め、自宅にとどまった人が約半数いた。9割の回答者の自宅に床上浸水や1階土砂流入の被害があり、結果的に避難の必要性がありながら十分な行動ができなかった実態が浮き彫りになった。
岩手、宮城、福島3県の死者52人のうち、河北新報社の集計で半数近くが自宅にとどまり逃げ遅れた。丸森町でも大半が自宅で被災しており、事前の避難の徹底が改めて問われる。台風は地震や津波と違い、進路が予測できるため命を守る行動が取りやすい。一方、地球温暖化の影響で記録的豪雨が相次ぎ、過去の教訓が通用しにくくなっている。台風19号も行政の想定を大幅に上回り、体が不自由な災害弱者への対応に課題を残した。こうした中、地域で避難を呼び掛け合い、回答者の9割が早めに避難場所や親類宅に逃げた宮城県大郷町の避難行動はモデルケースと言える。堤防が補強されても「次は別の堤が切れる」と、川の怖さや堤防のもろさを家庭内や地域で共有していた。
災害の規模が大きくなればなるほど、救助する側のマンパワーは手薄になる。本当に助けが必要な災害弱者に救助を集中させるためにも、逃げられる人は事前の避難を徹底したい。(2019.11.13(水) 12:03配信 北河新報 ONLINE NEWS)
超高齢者時代にむかっている日本において、災害弱者問題はさらに拡大していきます。高齢者の避難は地域の自治会が支援がなければ解決しない問題です。しかしながら地域で開催される自治会主催の防災訓練への参加者は相変わらずで特に若者の参加は著しく悪いというのが現状です。多くの若者が参加したくなるようなイベントへ変革する必要があるのです。渋谷では防災フェスというイベントに位置づけライブなども行われています。これまでの常識に捉われることなく新しいやり方で防災訓練を企画運営する必要があるのです。