速報音でパニックに
新年三が日の最終日。熊本県益城町の仮設住宅で、村上和美さん(40)が夕食の支度を終え、家族がテーブルに着いた頃だった。携帯電話の緊急地震速報が鳴り響き、直後に下から突き上げる衝撃と長い揺れに襲われた。県北の和水(なごみ)町で震度6弱。「逃げないと」。次男の颯太君(11)は、防災グッズを詰め込んだリュックを背負って叫んだ。言葉とは裏腹に全身がこわばり、動けない。「怖いよ」-。その場で泣き崩れた。母のなだめる声も、しばらく耳に入らなかった。
3年前、熊本地震が発生し、自宅2階の寝室で震度7に見舞われたあの晩も、激しい揺れの中で緊急地震速報が鳴りやまなかった。避難先でも、余震とともに流れる速報の音に颯太君は「怖い、怖い」とパニックに。地震から1年の節目、小学校であった追悼集会では途中で息苦しくなり、最後まで参加できなかった。大きな余震がなくなり、やっと落ち着いてきた昨年9月、北海道胆振(いぶり)東部で最大震度7の地震。テレビに映る山が連なった被災地は、益城に似ていた。「どこで(地震が)あってるの? 熊本にも来るの?」。発達障害がある颯太君は情緒が不安定になり、まばたきを繰り返すチック症状も現れた。
テレビで恐怖追体験も
多発する地震が引き金になり、熊本で被災した子どもが恐怖を追体験して心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症するなどの事例が相次ぐ。益城町の病院で子どもを診療する田中恭子医師は、「各地で地震が起きると、おびえて眠れなくなったり、潜在的な被災体験が呼び起こされて強い不安を感じたりする子どもは少なくない」と指摘する。自然な反応であり、通常は時間とともに回復していくが、「周囲の大人は『いつまでそんなことを』と軽く流さず、安心できる声掛けをしてほしい」と呼び掛ける。
益城町立広安西小では昨年度から、3、6年生の総合的な学習の時間を活用し、心のケアと防災教育に取り組む。同級生や地域住民からの聞き取りや、校区の防災マップの作成などを通して被災体験と向き合う。同校の防災主任の渕瀬貴治教諭(38)は「時間がたったからこそ、心の状態を表現できるようになった児童もいる。状況や時期に合った取り組みを児童と一緒に考えている」と話す。被災した子どもの心の問題に詳しい兵庫県立大の冨永良喜教授(災害臨床心理学)は「被災地では防災教育と同時に、災害後の心の動きやストレスの対処法を学ぶことが大切だ」と提言する。(4/11(木) 10:23配信 西日本新聞)
大人でも怖いのです。子供にとって、その恐怖心は大人の数倍でしょう。きちんと心のケアを周囲の大人がおこなうことはとても重要なことです。子供を守り育んでいくことは大人の責任なのですから!!