共働き家庭はどうしても子どもと離れる時間が長くなります。そのとき、もし大災害が起こってしまったら……。今回のテーマは「防災食」です。

ライフラインが遮断されて、まず困るのは「食事」と「トイレ」と言われています。皆さんは、防災食を備えていますか? 「防災食」と聞くと、イメージするのはどんなものでしょうか?

おそらく、多くの方がカンパンや缶詰、クラッカーなど、味気のないものを想像することと思います。災害時の状況を想定して少量でカロリーが高いものの、特においしいものではないと思われているでしょう。しかし、災害に遭って非常に苦しい状況下にある中、それらの防災食を食べるところをイメージしたとき、災害から立ち直るような、前向きな気持ちになれそうでしょうか?

●温かい食事はそれだけで人の心を癒やす、「備蓄」できるものは「食べる喜びを感じられない」ジレンマが

パスタや缶詰、レトルトやお菓子など、いろいろと試食した結果、全員が「あー生き返る!」と口にしたのは、ポットに入れた温かいお茶でした。極寒の状況下では、その他の食事はほとんど味が感じられなかったのです。防災食でもなるべく「温かい食事」であることが大事なのだということを念頭に置いてください。その上で、災害時の食事を分類すると、大きく3つあります。

(1) 常温保存でき、そのまま食べられるもの(カンパン、クラッカー、缶詰、ドライフルーツなど)

(2) 常温保存でき、加熱または加水してから食べられるもの(アルファ化米、インスタントラーメン、レトルト食品など)

(3) 常温保存が効かず、加熱してから食べられるもの(冷蔵庫の中身、冷凍食材など)

東日本大震災、北海道胆振東部地震、西日本豪雨など、最近の災害は停電が長く続く傾向にありました。被災された多くのご家庭では、最初の数日間は生ものを鍋で煮たり、雑炊にしたりしながら食べて過ごし、それでもライフラインが復旧しなかった地域は、そこから缶詰やレトルトを食べるようにしたといいます。

お子様がいらっしゃるご家庭は特に、冷蔵庫の中身は充実しているでしょうから、停電時はどのように生ものを加熱調理するかなどについて考えてみるといいと思います(例えば、(3)をカレーにする場合、(2)もレトルトカレーを備蓄していたら、へきえきしてしまうかもしれません)。 

そしてここでも言えることは、「停電時でも温められること」「加熱調理できること」の大切さです。それがなければ、そのままでは食べられない生ものは廃棄するほかないでしょうし、食べられてもおいしくいただくことはできないでしょう。

ただ「備えていたものを食べる」のではなく、「食べたいものを備える」という観点で、防災食の備蓄を始めてみてください。被災時も立ち向かうことのできる、健康な心身を保つために。食べることは、生きる活力なのですから。(2019.5.22(水) 12:00配信 日経DUAL)

食事は生きるための糧です。暖かい食事は元気の元です。みなさんも災害時の食事について今一度考えてみてください。