「気にもかけられない存在」だが「貴重な情報が満載」

梅雨、豪雨、台風の季節を迎えた。自治体のハザードマップで、自分の家がどこにあるか確認する。避難先を確認し、そこまで歩いてみる。歩くときにはハザードマップを持参し、自宅から避難先までの道中に低い場所、崩れやすい場所がないかを確認する。そうした備えはできているだろうか。

もう1つ確認しておきたいのが、災害の歴史だ。

このマークをご存知だろうか?

これは「自然災害伝承碑」の地図記号。

過去に発生した津波、洪水、火山災害、土砂災害などの自然災害の情報が記載されている石碑の在り処を教えてくれる。「そんな地図記号は学校で習わなかった」という人は多いだろう。それも当然で、つくられたのは2019年3月15日と、わずか1年とちょっと前なのだ。

「自然災害伝承碑」は過去の災害をいまに伝えるが、その存在を意識する人はほとんどいなかった。だが、災害は同じ場所で繰り返し発生する。たとえば、2018年7月の「西日本豪雨」で被災した広島県広島市安佐北にも、洪水や土砂災害の石碑があった。 だが、「自然災害伝承碑」は多くの人にとって「気にもかけられない存在」で、地図にも載っていなかった。もし、地図に掲載されていれば、市民の防災意識の向上につながったのではないか。

こうした反省をふまえ、この地図記号がつくられた。

「地理院地図電子国土WEB」で簡単に「自然災害伝承碑」を見つける

さて、あなたの家の近くに「自然災害伝承碑」はあるか?

「自然災害伝承碑」の場所は、WEB上にある「地理院地図電子国土WEB」”’(国土地理院)で確認すると便利だ。「地理院地図電子国土WEB」のトップ画面の左肩にある「標準地図」をクリックすると、さまざまな情報が表示される。年代別の写真、標高、土地の凹凸などなど。

そのなかの「災害伝承」をクリックすると「自然災害伝承碑」が表示される。さらにそこをクリックすると洪水、土砂災害、高潮、地震、津波、火山災害など、災害別の伝承碑を検索することができる。

前述した広島県広島市安佐北で、洪水、土砂災害の伝承碑を表示させると以下のようになる。

洪水、土砂災害に関する伝承碑は3つあり、さらにそこをクリックすると、災害の発生年月日や被害の規模が示される。

実際に歩いて自然災害を感じる

自宅近くに「自然災害伝承碑」があることがわかったら、実際にそこまで行ってみるとよい(筆者の実践は、動画「『地理院地図電子国土WEB』で自宅近くの『自然災害伝承碑』を見つけ、そこへ行ってみた」にまとめました)。
 
筆者の家の近くには、天明6年の水害の碑、明治43年大洪水記念碑、昭和22年大洪水記念碑などがあった。とくに昭和22年の大洪水とはカスリーン台風によるもので、碑の裏には「被害は甚大を極め、流出倒壊8、半壊25、床上浸水600余」などと当時の様子が克明に記されていた。

記念碑を自分の足でみると、身近な災害の歴史を理解するとともに、自宅近くの地形、水の流れなどを体感することができる。こうすることで防災意識が高まるだろう。繰り返しになるが、災害は同じ場所で発生しやすい。とりわけ水関連の災害はそうだ。

発生後にインフラが整備され、一定期間は災害に至らない時期があったが、近年は雨の降り方が変わっており、豪雨による災害が増加傾向にある。豪雨時に水がどこに集まるか、どこの土地が崩れやすいかなどは、その土地の特性によって決まる。

命を守るには「逃げる」という感覚を身に着ける必要がある。そういう点で「自然災害伝承碑」は貴重な情報を私たちに伝えていると言える。(2020.7.1(水) 12:00配信 橋本淳司)

自然災害伝承碑の地図記号は2019年につくられました。災害は同じ場所で繰り返し発生することが多いという事実に基づき過去の災害を知ることで現代の防災に活かすという意味がこの地図記号には込められています。地理院地図電子国土WEBで探すことができます。ぜひ一度検索してみてください。