官民の共同運営で公共性が高い「地震保険」に加え、民間の損害保険会社による「上乗せ補償」に加入する動きが広がっている。住宅再建や家財再購入の際、地震保険金の不足分を補う。東日本大震災からもうすぐ8年。自分が加入している地震保険の補償は十分か、確認したい。

■「地震大国」日本の保険

地震保険は、巨大地震が発生し、多額の保険金支払いが必要になった際は、政府が保険責任を分担する官民一体の仕組みで、世界でも珍しい。アジアを中心に各国の注目を集めている。「関東大震災(大正12年)級の地震がいま起きても、全額払いができるよう準備している」(財務省信用機構課)

地震保険に関する法律」(地震保険法)に基づき、1回の地震の損害額が約2200億円を超えると政府が99・8%、民間が0・2%を支出する。現在、約11兆円まで支払う枠組みで、平成7年の阪神大震災(保険金支払額783億円)で初めて発動された。

単独では入れず、火災保険とセットで加入するのが特徴。保険料は都道府県ごとに一律で、どの保険会社や代理店で入っても保険料や内容は同じだ。保険会社は保険料から利益を得ず、全額を積み立てる。火災保険加入者のうち地震保険を契約した人の割合(付帯率)は、昭和41年の創設から年々増え、平成29年度は63%で過去最高だ。

■被災者の声

しかし、地震保険は「被災後、当面をしのぐ」ことが目的で、補償範囲は火災保険金額の50%が限度であるため、「追加の保険料を支払ってでも100%の補償がほしい」という声が根強くあった。そこで誕生したのが損保会社単独の上乗せ補償だ。

損保ジャパン日本興亜は、27年10月から「地震危険等上乗せ特約」を発売。損壊や津波など地震が原因の損害の補償を、最大で50%まで増やすことができる。これにより、「火災保険金額の50%が限度」の地震保険金と合わせて火災保険金額の最大100%まで補償する。東日本大震災(23年)の被災者の声を受けて開発した。発売から半年後の28年4月に熊本地震が発生。4~9月の契約件数は、前年10月~同年3月の2倍以上に増加した。以後も地震のたびに加入者が増え、「地震保険や上乗せ特約への関心が高まっている。今年1月の契約件数は、前年同期比2割増」という。

東京海上日動は、阪神大震災(7年)後の14年6月から同種の特約を扱っている。損害保険、生命保険などの区別なく必要な補償をまとめた“超保険”の一部で、上乗せ特約への加入で最大100%までを補償する。30年の大阪北部地震で、木造2階建て住宅の20~40%が壊れ「小半損」と認定された大阪府高槻市の男性(70代)は、同社と上乗せ補償を契約していたので、地震保険金270万円に270万円が上乗せされ、計540万円を受け取った。

三井住友海上火災保険は、地震に起因する火災の損害を補償する「地震火災費用特約」を販売。もともと「火災保険金額の5% 300万円限度」を自動セットとしてきたが、5%の部分を30%、50%とする商品を順次追加した。例えば「50%、限度額なし」の特約に加入すると、地震保険による補償50%と特約による補償50%の計100%まで補償される。特約の契約件数は、27年10月に50%を投入してから大幅に増えたという。

■二重ローンを回避

気になるのは保険料だ。保険は大勢が少しずつお金(保険料)を出し合い、事故にあった少数の損害を補償する(保険金を支払う)仕組みだが、地震はひとたび起きると被害が甚大であることが予想されるため、保険料はやや高い。損保ジャパン日本興亜によると、同社で加入した場合、宮城県の住民は地震保険料8600円に上乗せ特約保険料が1万6070円で、合計2万4670円。東京都は2万300円に3万9830円を上乗せして合計6万130円。福岡県は6100円に1万1200円を上乗せして合計1万7300円-など(昭和56年6月以降の新耐震基準の建物で試算)。

しかし、加入者は「高齢で新たに(被災後の建て直しの)住宅ローンを組みにくいので、保険料が割高でも、支払えるうちは加入しておきたい」(宮城県、女性)という例が目立つという。逆に若い世代は、ローン返済中の建物が倒壊し、新たに建て替える住宅ローンを背負う「二重ローン」を回避できる。二重ローンは東日本大震災後、被災者の暮らしを圧迫し、社会問題化した。 分譲マンションでは、管理組合が上乗せ補償に加入することで、共用部分の損害をまかなえる。住民に新たな負担が発生しないことから、建て替えの合意形成を得やすいという。

日本損害保険協会(東京都千代田区)によると、地震被害の補償を手厚くする方法の第一は、「地震保険は、建物に加えて家財にもかける」こと。「地震保険金の用途は建て替え、引っ越し、教育費など使途が自由で生活再建の支えとなる」普段の家計を圧迫しないよう、上乗せ特約のために支払う保険料や補償範囲を検討し、地震発生に備えたい。(2019.3.5(火) 10:00配信 産経新聞)

地震がひとたび発生するとその被害は広域にわたります。そして一度に多くの方が被災者になり大切な財産にもおおきな被害を被ることが予測されます。地震保険は記事にもあった通り地震保険法により政府が資金の準備をしています。その目的は建物の再建ではなく生活の再建です。したがって保険金の活用方法は多岐にわたっています、生活費の充当、ローン返済、引っ越し費用への充当などです。平成29年の地震保険への加入率は63%です。過去最高だと言っても火災保険や自動車保険の加入率に比較すればまだまだ低レベルです。地震保険の本質を理解して加入の検討を行うことも防災対策の一部になります。まだ加入していない方は、一度ご家族で話し合ってみてください!!