好調だったタワーマンション市場に、買い控えが起きる懸念が高まっている。災害に強いとみられてきたが、台風19号で人気居住エリアの武蔵小杉(川崎市中原区)のタワマンが水害に見舞われたためだ。専門家からは、川沿いや湾岸に建設されやすいという立地条件と、地下から浸水しやすいという構造の両面で、タワマンの水害への弱さを指摘する声もあがる。

台風19号で被害が出たのはJR武蔵小杉駅近くの47階建てマンション。付近を流れる多摩川から逆流した水が地下に流れ込んで配電盤が使えなくなったことで、住民は停電や断水でエレベーターやトイレが使えないなどの被害を受けた。

不動産関係者は、タワマンなどの購入を検討している買い手が「一時的に懸念やリスクを感じるだろう」と話す。「特に武蔵小杉や、今回大きな被害はなかったような湾岸エリアでも、敬遠される可能性は高まる」と指摘する。

一方、JRや東急など複数路線が乗り入れている武蔵小杉駅周辺を始め、タワマンは交通の利便性が高いエリアに建設されるケースも多く、関係者は「立地の優位性は台風や水害が起こっても変わるものではない」と強調。相続税の軽減対策としての購入需要もあり、「需要は底堅いのでは」と、買い控えは限定的だとの予測も聞かれる。

ただ、タワマンの建物自体の脆(ぜい)弱(じゃく)性を指摘する声もあがる。

マンション防災に詳しい神戸大大学院工学研究科研究員の大西一嘉氏によると、タワマンは超高層となる分、日陰の面積が大きくなるため、周辺住民への日照をめぐる悪影響を避け、川や湾岸に建設される傾向があるという。タワマン居住者にとっても良好な眺望が期待でき、人気も高まるからだ。

また、電気機器などを置く地下室では、換気のため通風口の設置が義務付けられており、そこから浸水する危険があるという。大西氏は「通風口は地表面から高くないところにあり、そこから水が入ってくる」と指摘。「思わぬところに通風の穴が空いていて、平面図を見ても、なかなか把握するのは難しい」と述べ、対策に乗り出すには、本格的に設計を見直す必要が出てくると説明する。

自治体による高層マンションの災害対策が水害については後手に回っている現状も、タワマン不安に拍車をかけそうだ。東日本大震災以降、災害対応は地震への備えが中心になっているからだ。川崎市の担当者は「高層集合住宅への防災備蓄や災害対応トイレの導入を推奨するなど、あくまで震災対策の一環で対応を進めてきた」と強調。高層マンションの水害対策を担当する部署は置かれていないという。(2019.10.25(金) 18:11配信 産経新聞)

タワーマンションは防災の観点から見るとかなりリスクがあることははっきりしています。今回の武蔵小杉のタワーマンションがそのことを教えてくれました。タワーマンションを作る会社も購入する人もそのリスクをどのように考えるのかが重用なのたと思います。