静岡県が定める「地域防災の日」の6日、地域防災訓練が県内各地で行われた。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、参加者は前年度比8割減の約15万8千人(県速報値)にとどまった。それでも、2千超の自主防災組織が感染症対策を踏まえ、大地震や津波、風水害などへの備えを再確認した。

三島市の徳倉小ではコロナ禍における避難所の運営体制を確認した。クラスター(感染者集団)の発生防止のため、防護服やフェースシールドを着用した関係者が体育館の入り口前で避難者の体温や健康状態を入念にチェックした。発熱者や濃厚接触者は動線を分けて、校舎内の専用スペースへ誘導した。

例年は地域住民ら約400人が参加するというが、今年は人数を4分の1程度に減らして実施。徳倉小学校区自主防災本部長の長谷川隆さんは「訓練は大勢の参加が望ましいが、コロナ禍で人の密集を避けなければならない。有事に備え、今後、訓練内容を共有していきたい」と述べた。

また、孤立集落対策として5市町の中山間地や沿岸部でヘリコプターの着陸誘導訓練が繰り広げられた。

■スマートフォンを活用し避難所運営 浜松

新型コロナウイルス感染拡大に伴い急加速するデジタル化の流れを防災にも取り入れようと、浜松市が6日の地域防災訓練で、スマートフォンを活用した避難所運営の実証実験に臨んだ。感染症対策で訓練に参加できない市民に対し、活動の様子を同時配信する取り組みも試行。コロナ禍における新たな防災対応を模索した。

「避難者情報を入力してください」

同市中区の相生小。避難者役の自主防災隊や町内会役員10人は担当者の指示に従い、スマートフォンを黙々と操作した。例年は千人以上の地域住民が参加し、炊き出しや初期消火など大規模な会場型の訓練を行うが、今年は異例の風景になった。

実証実験では市が委託開発中の専用アプリを使った。参加者は避難前に氏名や逃げる施設名を入力し、実際に避難所で受け付けを済ませるまでの流れを体験した。避難所への到着と同時に個人情報が登録され、スムーズに受け付けできることを確かめた。避難所内で新型コロナの感染者が出た場合、濃厚接触者とみられる人にアプリを通じて個別通知する仕組みも学んだ。

名塚町自主防災隊長の太田裕士さん(71)は「操作は思っていたより簡単。ただ、慣れないと途中で操作が分からなくなる人もいると思う」と語った。同市の防災アプリのダウンロード数は3万2千件で、全市民の約4%にとどまっている。利用者を増やすことも課題だ。

訓練の様子は市の職員が動画撮影し、地域住民限定で配信した。デジタル・スマートシティ推進事業本部の瀧本陽一専門監は「普及には普段から使ってもうことが大切で啓発が欠かせない。配信した動画は編集して、誰もが訓練できるように工夫したい」と話した。

■医療、環境分野でも実験

アプリを活用した避難所運営は、デジタル技術を活用してさまざまな地域課題の解決を図る浜松市の「浜松ORIプロジェクト」の一環。防災のほか、医療や環境など計八つの分野で実証実験が進められている。一方、県も避難所運営を支援するプログラムを開発。公式防災アプリ「静岡県防災」に新機能として追加し、12月中旬にも使用できるようにする。(2020.12.7(月) 8:35配信 静岡新聞)

コロナ禍で防災訓練も大きくその開催方法が変わりました。試行錯誤の中でベストを探している状況です。今、大規模災害が発生したらと考えると背筋が寒くなります。しかし災害は時と場所を選んではくれません。その時のために個人レベルでの防災対策の推進が大切です。