2011年の東日本大震災から9年が経過しました。現時点でシニア女性はどれほど防災に関する意識を持っているのでしょうか。株式会社ハルメクの生きかた上手研究所所長・梅津順江さんがアンケート結果を基に報告します。【毎日新聞経済プレミア】
私が所属する「ハルメク 生きかた上手研究所」は今年2月、40~79歳の女性600人に「防災意識と実態に関するアンケート」をウェブ上で行いました。当研究所がこうしたアンケートをするのは初めてです。
◇「防災への意識ある」は2割弱
自身の防災意識が「やや高い方」「高い方」と回答したのは112人(18.7%)でした。「どちらともいえない」の268人(44.7%)と、「やや低い方」「低い方」の220人(36.7%)と比べて低く、防災への意識があると思っている人は2割に達していませんでした。年齢別に見ると、防災意識が最も高いのは70代で、以下60代、40代、50代と続いていました。また、いざというときの「避難」にも消極的な姿勢が見て取れました。居住する地区に避難勧告が出た経験がある141人のうち、実際に避難した人は21人でした。避難しなかった120人は、次のような理由をあげていました(複数回答可)。「避難するほうが危険と思った」が57人(47.5%)、「自分の家や自分自身は安全だと判断した」が49人(40.8%)、「近所で誰も避難していなかった」が33人(27.5%)でした。40代以上の女性は自身の防災意識が高くないと思っていて、避難することにも消極的という傾向が見えてきました。
◇災害時の不安と備え
災害時には大きな不安があることも浮き彫りになりました。「災害時に他の人より劣っていると感じる点があるか」という質問に、385人が「ある」と答えました。劣っている点は、「体の健康や体力的なこと」が181人(47.0%)、「助け合いができる周囲の人の存在」が170人(44.1%)、「金銭的なもの」が169人(43.8%)でした(複数回答可)。また、災害に対して何らかの備えをしているかどうかについても質問しました。年代が高いほど備えをしている割合が高く、70代は8割以上でした。実際に備えていることは「食料や防災用品の備蓄」が291人(48.5%)、「避難場所の確認」が197人(32.8%)、「家族との連絡手段の確認」が195人(32.5%)、「病気にならないようにする」が188人(31.3%)、「家具の転倒防止対策」が162人(27.0%)などが並びました(複数回答可)。また「食料や防災用品の備蓄」をしている場合、1世帯あたり平均5.7日分を備蓄していました。
◇避難所に関する声も
今回のアンケートから、40代以上の女性は「災害時には弱者になるという不安を持ち、備蓄などへの意識も高い。その一方で、防災意識が高いと自覚する人は少なく、避難にも消極的」という結果が出てきました。災害に関しては、不安がある一方で、避難すべき目安がわからなかったり、自身の判断を正当化する傾向があったりするようです。いざというときに正しい動きができるよう、普段から自分がどう行動すべきか考えておく必要があるでしょう。また、避難を経験した女性から、避難所に関して「不衛生」「寒い、狭い」「人がいてストレス」「自由がない」といった声が多く聞かれました。女性や高齢者でも安心して過ごせる避難所が増え、それが多くの人に伝わっていけば、避難へのハードルが下がっていくかもしれません。(2020.3.29(日) 9:30配信 毎日新聞)
防災を考えるとき女性目線はとても重要です。今までは男性手動で防災対策を行っていたことで発災時の避難所運営に多くの課題が見つかったことは記憶に新しいところです。避難所生活を快適には出来ないかもしれませんが、安心して避難生活がおくれる環境づくりが急務です。