日本列島がたくさんの自然災害に見まわれた2019年。特に、台風15号と台風19号は、東日本各地に大きな被害をもたらしました。

道路や鉄道などの交通網が分断されたりした被災地域周辺の観光施設には、キャンセルが続出。復旧した後も、また実際には被災していないエリアでも、災害の“風評被害”なのか旅行を見合わせてしまう人が続出して、観光需要の落ち込みが深刻なケースもあるようです。

「ふっこう割」とは、どんな仕組み?

そんな状況に対する公的支援のひとつが「ふっこう割」です。まずは、観光庁の資料でそのスキームを見てみましょう。

 

2020年1月時点で最新の「ふっこう割」は、台風15号と台風19号による被災地域への観光を対象としています。ポイントは次のとおりです。

(1)どんなメリットがあるの?
・一泊以上の旅行・宿泊を対象に、1人1泊5000円(最大)の割引が受けられます。なお、1回の旅行で、日本人1万5000円、外国人(訪日旅行客)5万円が各上限となります。
・新幹線、特急、高速道路ETCなどの割引もあります。

(2)どのくらいの予算なの?
・国(観光庁)が被災状況等をもとに都県ごとに補助金(総額約24.4億円)を交付します。金額上位は、千葉県約4.6億円、長野県約4.3億円、福島県約3.5億円などです(いずれも千万円未満切捨表示)。

(3)どうやって利用するの?
・補助金を受けた都県から承認を受けた旅行業者、宿泊業者、旅行予約サイト運営旅行業者に申し込みます。

(4)期間はどのくらいあるの?
・受付開始は一番早かった長野県が2019年12月17日で、1月中旬以降予定のところもあります。
・対象期間は2019年12月から2020年3月にかけて設定されていますが、各都県の予算消化状況次第で受付が早期終了となる可能性もあります。

新聞やネットで「お一人さま〇○○○円の補助金が適用されています!」といったキャッチコピーを目にされた方も多いかもしれません。旅行業者によっては、発売すると早々に完売してしまうケースも少なくないようです。

万能ではない「ふっこう割」

この制度ですが、被災地域にとっては観光需要が喚起されることによって復旧の手助けのひとつになります。訪れる観光客にとっては割安に旅行でき、訪れた地で旅行代金以外にも観光・飲食・お土産品などの支出をすることで被災地の復旧の応援にもつながります。一方、限られた予算を「早い者勝ち」で奪い合っているイメージも否定はできません。またパック型の旅行では、平日出発など一部の人にしか利便性のない商品も見受けられます。被災地を応援するには、今回のような公的な補助金制度に乗っかるだけではなく、個人レベルでもいろいろとやり方が考えられます。義援金やふるさと納税(返礼品をもらわない形)によって直接お金で支援することも可能です。また、ボランティアに応募し現地で汗を流して応援する形もありでしょう。

まとめ ~大きな経済効果や使う際の意識にも注目

とはいえ、旅行消費による経済波及効果はとても大きいのです。2017年の旅行消費額は27.1兆円。この数字自体も巨額ですが、同年には生産波及効果55.2兆円、付加価値誘発効果27.4兆円、そして雇用誘発効果249万人(波及効果を含めると472万人)などの数字が示されています(※2)。旅行や観光で現地を訪れてお金を使うことは、思いのほかヒトやモノを動かして経済を活性化しているのです。「ふっこう割」は、今回初めて導入されたわけではありません。近時では、全道にブラックアウト(全域停電)を発生させた北海道胆振東部地震(2018年9月6日発生)の復興支援として「北海道ふっこう割」が予算規模約81億円で2018年10月から実施されるなど、過去の実績も積み上がっています。

「ふっこう割」はもちろん、待ち受けていて利用するような制度ではありませんが、日本では自然災害が多く発生しています。災害が発生していろいろな応援が必要とされる場合、状況によっては出掛けることをためらうよりも実際に現地に行ってみることが、被災地への立派な応援になる場合もあるのです。(2020.1.22(水) 12:12配信 ファイナンシャルフィールド)

被災地を支援する方法はいろいろとあります。その中で被災地に出向き観光というかたちで訪れお金を落とすことも立派な支援です。