新型コロナ禍のいま! 災害時の避難について宮城のNPO法人が「車中泊」を提案?

新型コロナ禍のいま、問題視されるのが避難所の3密リスクです。梅雨にかけて豪雨被害も懸念されるなか、感染と災害の複合リスクも十分に考えられます。宮城県のNPO法人「みんなのくらしターミナル」は車中泊による避難を提案しています。実際に、この訓練について代表者に話を伺いました。

――車中泊による避難の提案をはじめたきっかけはありますか。

まず、避難所は3密の極みになるでしょう。わたしたちNPO法人は、過去に熊本地震の被災地支援経験があります。そこで、実際に避難所の状況を目の当たりにしているため、今回のコロナ禍による感染リスクに注目しました。

そして、日本国内でも地域によって感染者数の開きがあることに目を向けました。海外の研究者によると、これは文化の違いが関係しているといいます。

東京や大阪などの大都市は公共交通機関による移動が多いものの、宮城県のような地方都市はクルマでの移動が主流です。

クルマ文化であるかどうかの違いで、「感染の数に差が出ているのではないか?」と考えたとき、クルマが人との接触を遮断するひとつのカプセルになります。これが、車中泊の避難を提案する理由です。

また、熊本地震での被災地支援も大きく関係しています。当時、避難所の周辺には車中泊のクルマが数多く停車していました。

避難所のなかは人で溢れかえっており、プライバシーもなにもなく、路上生活と変わらない状況です。

加えて、乳幼児を連れた人では、泣き声によるトラブルも起こっていました。こうした事態を目にすると、やはり車中泊のほうが快適な避難生活を送れると実感しましたことも大きなきっかけのひとつです。

――車中泊を推奨する理由を教えてください。

第一に、感染リスクを防げる点です。現状、避難所の数は非常に少なく、いざ災害が起きた時には人で溢れかえってしまうでしょう。

そのため、NHKの番組でもコロナ禍による避難所の感染リスクについて取り上げています。クルマならば、他人との接触を遮断できるため、これ以上の感染を広げることもありません。

そして、熊本地震の例でもあるようにストレスなく避難生活を送れることです。クルマは、そのまま移動もできるので、同じ場所にずっといる必要もありません。

実際に、被災地で車中泊をする大勢の人は、昼間の時間帯に避難所周辺から移動して、自宅に戻り片付けをしていました。ストレス発散や息抜きがてら、自由に行動できるのが大きなメリットでしょう。そのため、エコノミー症候群を起こすこともありません。

また、公衆衛生面的にもクルマのほうが安全です。人で溢れかえる避難所に比べ、クルマは各家族に空間が設けられているので、他人と接触することもありません。

そして、クルマから十分な電源も供給できるので、スマホやパソコンなども使えます。携帯充電器がなくても、問題なく過ごせるでしょう。車内で寝る時も、現在のクルマはシートが十分に倒せるタイプも多いため、体を横にして休むことができます。

昼間のうちは移動して、夜の間だけ車内で過ごすような形であれば、そこまで苦にもなりません。さらに、被災地でアンケートをおこなったところ、全体の40%近くが車中泊をすると回答しています。

新型コロナ禍での避難所生活となれば、これまでとは違うトラブルも新たに起こるでしょう。また、ソーシャルディスタンスを考えた場合、すべての人が避難所を利用するのは現実的に難しいです。

こうしたことから、車中泊による避難は苦肉の策ではなく、プラスに考えるべき手段だといえます。
避難所として車中泊する際のポイントは?

では、車中泊をする際にはどんなことがポイントとなり、注意すべきなのでしょうか。前出の代表者は次のように話します。

――実際に、車中泊訓練ではどんな取り組みがおこなわれたのか教えてください。

車中泊の訓練は、それぞれふたつの地域に分かれておこないました。各地域で3家族ずつ参加したため、合計20人程度になります。参加者は、未就学児から高齢者まで幅広い年齢層の方々が揃っています。

まず、ひとつの地域ではソーシャルディスタンスを守るために、駐車場のクルマを千鳥格子状に停めます。前方左右それぞれ2.5メートルの感覚を開けるように意識しました。

もう一方の地域は、地形の問題により千鳥格子の駐車が難しいため、それぞれのクルマの間隔が空くように工夫をしてもらっています。

食事は、炊き出し方式と、ご飯だけを炊いてレトルト食品を配布する2種類を実施。その結果、炊き出しになると人との接触が生じるため、レトルト食品での対応が最適だと分かりました。

また、エコノミー症候群にならないよう、時間を決めてラジオ体操を導入し、クルマごとに交代で散歩に出かける取など、同じ場所にいることでストレスにならないような配慮も心がけています。

――訓練をおこなった結果、改めて気づいたことや今後の課題はありますか。

ひとつ目は、車中泊であってもトイレや物資の配布時は人が並ぶので、密集してしまうことです。これを避けるために、トイレはクルマのなかでも使用中だと分かるように、飛行機や新幹線のような使用中ライトを付ける取り組みを導入するべきでしょう。そして、物資は各クルマに渡すようにすることです。

また、車中泊は避難所のように名前を書いて把握できないため、誰がどこにいるか分からない点が問題視されます。

これは、熊本地震での教訓です。その結果、物資を受け取れない事態も発生していました。そこで、車中泊による避難時は特定の場所を指定して、分散させないような取り組みをおこなうべきだと考えます。もしくは、分散しても管理できるようなアプリを作る必要があるでしょう。

実際に、福岡県の福岡市では「ツナガル+」という被災地情報を共有できるアプリを開発していました。GPS機能を搭載しているため、被災者の位置も把握できるようです。岐阜県でも、避難所の周辺に車中泊の駐車場を用意するといった取り組みもおこなっています。

――車中泊による避難をするうえでのアドバイスを教えてください。

車中泊での避難をするときのワンポイントアドバイスとして、ジャージのズボン、靴下、配膳用のトレイを積んでおくのをおすすめします。災害はいつやってくるか分からないので、避難時の服装がスカートやジーパンを履いているケースもあるでしょう。こうした服装は身動きが取りづらく、避難時の生活でも不便になります。

ジャージは、寝る時や作業を行う場合にも支障が出ないほか、そのまま外出することもできるので便利です。また、女性は足元が冷える人も多いので、靴下を常備しておくといいでしょう。実際に、熊本地震の際にもこうした物資が求められていました。

そして、飛沫感染を防ぐためにも、配膳トレイを準備しておきましょう。炊き出しの際など、持参したトレイであれば、配る人も配られる人も安心です。また、車内で食事をする時には机代わりにもなるので便利でしょう。クルマに何枚か常備しておくのをおすすめします。

このように、各地では熊本地震の教訓をもとに、車中泊の取り組みがおこなわれていました。そのため、行政も車中泊の需要を見込んだうえで、あらゆる対策に取り組むことが今後の大きな課題といえるでしょう。

新型コロナ禍による避難所の感染リスクを防ぐためにも、車中泊は効果的な手段のひとつです。今後の課題はあるものの、現状の避難所不足による問題を解消する一手になります。

ただ、なかにはクルマを持っていない家族もいます。こうした人が優先的に避難所を利用できるよう、マイカーを持っている人は車中泊による避難を検討してみてください。(2020.5.16(土) 7:30配信 くるまのニュース)

コロナ対策において車中避難生活は有効だと思います。ただしエコノミー症候群には注意が必要です。また、災害が発生すると炊き出しが行われますが、コロナ対策においては炊き出しよりはレトルトパックの配布に移行することが必然となるでしょう。今回のコロナ禍で防災対策や支援活動が大きく見直される必要があります。