全国の20政令市と東京23特別区のうち6割が、内閣府が市区町村に要望する災害発生時の「トイレの確保・管理計画」を策定していないことが、毎日新聞のアンケートで判明した。

災害時にインフラが寸断されてトイレが使えなくなると、感染症などで被災者の健康被害を招く恐れがあり、人口が集中する都市部は特にトイレ不足の懸念も浮かぶ。

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、将来の災害に備えた対応が急務となっている。

災害時のトイレ対策は阪神大震災(1995年)を機に注目されるようになった。

東日本大震災(2011年)でも上下水道が止まり、水洗トイレが機能しなくなるケースが起きた。

避難者がトイレの回数を減らそうと水や食事を控えて「エコノミークラス症候群」を発症したり、不衛生なトイレで感染症を患ったりした。

同様の事例は新潟県中越地震(04年)や熊本地震(16年)でも確認された。

内閣府は東日本大震災などの経験を踏まえ、16年4月に「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」を策定。

■災害発生当初は避難者約50人当たり1基

■避難が長期化する場合は約20人当たり1基

■トイレの平均的な使用回数は1日5回――といった目安を示し、都道府県を通じて市区町村に計画の策定が望ましいとする通知を出した。

今回のアンケートは8月に実施。全43市区から回答を得て、10月まで補足取材した。

その結果、災害時の必要トイレ数を試算した上で「計画を策定している」と答えたのは43市区中18市区にとどまった。

また、各自治体が想定する最大避難者数に対し、ガイドラインの目安を満たすトイレ(携帯・仮設トイレなど)を確保できているかも尋ねたところ、5割強にあたる23市区が「確保できていない」と答えた。

一般社団法人「避難所・避難生活学会」代表理事で、石巻赤十字病院(宮城県石巻市)の植田信策副院長は「災害時のトイレ確保は被災者の命だけでなく人間としての尊厳に関わる問題だが、自治体の意識が高まっておらず対策が進んでいない。

市区町村は仮設トイレや被災者が使いやすいトイレの備蓄を進め、周辺自治体とも協力して必要数を確保すべきだ」と指摘している。

 ■災害時のトイレ計画を「策定済み」とした自治体

▽政令市=さいたま、千葉、横浜、川崎、静岡、浜松、名古屋、京都、大阪、堺、神戸、北九州、熊本

▽特別区=墨田、荒川、世田谷、杉並、練馬

(2020.11.11(水) 7:00配信 毎日新聞)

阪神淡路大震災から25年、東日本大震災から10年が経過しようとしている現代において、この結果は驚愕です。トイレの問題は人命にかかわる問題であり人間の尊厳にかかわる問題です。自治体はあてにせず自助・共助をベースとした防災対策をコロナ禍においては推進する必要があります。