災害時のトイレ対策をどう進めるべきか-。静岡県内の調査で自治体の対策は進展傾向にあるが「万全とは言えない状況」(関係者)とされ、静岡県民の関心も低いという。排泄(はいせつ)は非常時であっても人が我慢することができない極めて重要なテーマ。災害を経験した全国の事例からこの問題を考えたい。

「令和になっても厳しい現実がある」

静岡市内で11月に開かれた、災害時トイレ対策の行政、事業者向け研修会。同問題の解決を目指す絆プロジェクト(千葉県浦安市)の松崎秀樹代表は、10月の台風19号で甚大な浸水被害を受けた宮城県丸森町を視察した感想を率直に振り返った。避難所となった小学校の体育館で、被災者が寝起きするスペースの片隅についたてで目隠ししただけの簡易トイレが置かれていたという。「これでは音も何も聞こえてしまう。排泄は人間の尊厳に関わることなのにと痛切に感じた」

絆プロジェクトは災害時の利用を想定して設計される「トイレトレーラー」の普及を図っている。ただ、丸森町にも数台が配備されていたものの、出入り口が男女で同一だったり、階段の角度が急だったりして改良の余地があったという。 松崎さんが災害時のトイレ対策に問題意識を持つきっかけになったのは東日本大震災。当時、市域の大半が液状化被害に遭った千葉県浦安市の市長だった。同市は地震による死者や倒壊家屋はゼロだった一方、断水と停電で多くの家庭のトイレが使用不能に。上下水道の復旧まで27~36日間を要したといい、市民生活に多大な影響を与えた

松崎さんは、日本のトイレは高性能が故にひとたびライフラインが寸断されるともろさを露呈するとし、「トイレ問題は最大の都市災害」と指摘。特に配慮の必要な高齢者と女性の目線を反映した対策推進の必要性を説いた。

2018年の西日本豪雨では岡山県倉敷市真備地区も下水処理機能の全面停止により、同じ問題に直面した。水害は7月6~7日に発生したが、現地調査を始められたのは水が引くのを待ってからの9日。国への支援要請を経て仮設トイレが市内に搬入されたのは10日だった。それ以降の8日間で43カ所に169基の仮設トイレを配置して対応したが、研修会で担当者は「トイレのニーズをつかむことはそもそも難しい。自治体は地域防災計画などに対応を盛り込んでおくことが肝要」と呼び掛けた。

■設置訓練、大切さ認識 三島・夏梅木自主防災会

県内で1日に行われた地域防災訓練では、三島市の市立向山小で災害時のトイレ対策をテーマにした訓練が行われ、住民が非常時に備えた。地元の夏梅木自主防災会副会長の片山勝治さん(69)の指導で、参加者は折りたたみ簡易トイレの設置や排泄物に見立てた水の処理方法を体験した。片山さんは簡易トイレ用のポリ袋と汚物処理に使う凝固剤、代用品の新聞紙などをあらかじめ各家庭で用意しておくことを呼び掛けた。簡易トイレは子どもや高齢者でも容易に組み立てられるよう設計されていて、その手軽さに参加者から驚きの声が上がる場面も。田角ひろ江さん(71)は「こんなに簡単とは思わなかった。いざという時のために用意しておきたい」と話した。10月の台風19号では断水が発生し、地域で一時的にトイレが使えない状況になったという。片山さんは「災害が多発し、いつ何が起きるか分からない。事前の備えが大事」と強調した。

■静岡県内自治体 備えは推進傾向

県環境整備事業協同組合(静岡市葵区)が災害時のし尿処理対策について実施した2019年の県内調査によると、簡易トイレや携帯トイレを備蓄している自治体は35市町のうち32市町。前回2年前の23市町から増え、有事の際に排泄環境を住民に提供する備えは進む。一方で、仮設トイレの設置や収集、処理までを踏まえたし尿処理計画を策定済みとしたのは13市町。し尿収集運搬業者と協定を締結しているものの、非常時の連絡手段を取り決めているのは11市町にとどまり、いざというときに円滑に実行できるかという点で課題と言えそうだ。県や同協同組合の関係者は「市町の取り組みが深まらない限り、住民の関心は高まりづらい」と指摘する。(2019.12.8(日) 11:00配信 静岡新聞)

災害発生時のトイレ問題は命に関わることです。自宅のトイレが使用できればそれが1番ですが、断水時は水が流れませんるそこで自宅のトイレを利用した簡易トイレをお勧めします。国や自治体を当てにせず自分で準備しましょう。価格は1回あたりが100円と安価で用意できるものもあります。まずは、ご自宅に1人当たり100回分程度は備蓄しましょう!!