8年半前、東日本大震災を経験した人たちが、全国にその教訓を伝える取り組みを始め、南海トラフ巨大地震で大きな被害が想定される和歌山県串本町で、被災の経験を住民たちに伝えた。

先週、3人の男性が岩手県から和歌山県串本町を訪れた。岩手大学の広田純一教授が、東日本大震災で被災した、佐々木慶一さんらに声をかけ結成した語り部チームだ。

震災からまもなく8年半。街の移転などインフラについては、復興のの目途が立ったとして、今年から、全国を回る活動を始めた。

佐々木さんが住んでいた大槌町は、東日本大震災で、壊滅的な被害を受け、死者・行方不明者は1200人以上に上りった。佐々木さんの家族は無事だったが、親戚や友人、15人以上を亡くし、現在も仮設住宅で暮らしている。「被災前の大槌町の町並みに似ているが、ここで東日本大震災クラスの津波が来たら、大槌町のようなああいう土地に変わり果ててしまうのかと想像するとかなり怖いです」と語った。

本州最南端の串本町は「津波最速の町」といわれる。前回、1946年に起きた昭和南海地震では、和歌山県で269人が犠牲となった。 南海トラフ巨大地震では、津波は最短2分で到達し、その後、最悪の場合、津波の高さは最大で18mに達し、8200人が犠牲になると想定されている。避難が間に合わないとされる津波避難困難地域には、町民の3割以上の人が暮らしている。逃げることを諦めている住民も多くいるのが現状だ。

佐々木さんは講演で、大槌町でも、津波から逃げることを諦める人がいたと語り、串本町の住民に訴えたのは、一人が逃げることを諦めると、周りの人を巻き込んでしまうという危険性だ。

「東日本大震災でもあったが、自分の命はいいから逃げろというんですが、家族からしてみれば、あるいはよくその人を知っている人にしてみれば、その人は助けたいわけですよ。助けようと思ってその人の家に入っていって時間が経ってしまう。自分が助かろうとしないことが、周りの人を巻き込んでしまう可能性がある」

大水崎地区の住民は「津波がくるのに3分。あのような大きな津波が来たら、諦めなしゃーないなと、こういうような境地でおるんですが」と話していたが、佐々木さんが「(東北より)大きな津波が来るかもしれないし、小さいかもしれない。結論は最後でいい。最初からあきらめてしまうと助からない可能性がある。最大限努力を」と話すのを聞くと「最後まで逃げなしゃーないな。ひょっとして助かる可能性があるかもわからんと。大変参考になりました」と話した。

佐々木さんは「震災を経験して反省がある。繰り返さないために我々は地盤づくりをしているが、その繰り返さないためのプロセスをまだ被災していない地域の皆さんにも理解してもらい、一人でも命が助かるように願っています」と語った。(2019.8.26(月) 19:37配信 ytvi)

災害が発生する前から避難訓練や防災対策を日常的に行っておくことが大切です。自分が避難しなければ誰かを犠牲にする可能性があることを知ってください。誰もがあなたを助けたいと思っているのですから