30年以内に70%の確率で発生すると国が発表している「首都直下地震」。

震度6強以上の揺れが東京23区を襲うと予想されるが、なかでも、江戸川、江東の2区は「震度7」を記録するといわれている。その理由は、地盤の軟弱さにある。武蔵野学院大学特任教授の島村英紀さんが解説する。

「東京東部は全域が軟弱な地盤を抱えていますが、荒川の河口は特に地盤が弱い。砂利や泥などでできた軟らかい『堆積層』が地中に2~3kmの深さまで存在しています。地盤が不安定なため、同じマグニチュードでも揺れが激しく、近隣の地域の平均震度より2段階以上激しい揺れを感じる恐れもあります」

揺れが大きいほど、地中の水分や砂が地上にあふれ出し、地表が液体のようになる「液状化」と呼ばれる現象が起こるリスクが高い。東日本大震災(2011年)発生時、江戸川区に隣接し、同じく地盤が軟弱な千葉県浦安市で起こった激しい液状化現象に驚いた人も多いはずだ。

「北海道胆振東部地震(2018年)でも、震源から70kmも離れた札幌市内で液状化現象が起きました。それは札幌市が、石狩川から運ばれてきた堆積物によってできた弱い地盤であることが原因です。家そのものは基礎工事からしっかり造られているため無事でも、地盤沈下によって建物が傾いてしまい、生活できなくなった家庭が数多くありました」(島村さん・以下同)

もう1つ、2区にはほかにない大きな特徴がある。

お台場のある「ウオーターフロント」の存在だ。商業ビルや高層ビルが立ち並ぶ湾岸エリアの造成地は、関東大震災(1923年)以降にできた地域のため、大地震による被害のデータがない。いわば、まったく未知の土地だ。

江戸川区の大部分や亀戸周辺より湾岸エリアの方が標高が高いことがわかるが、決して安全とはいえない。

「造成地の地下にあるのは、もちろん軟らかい堆積層です。造成した足場はしっかりしていても、液状化により地域全体が沈む可能性もある」

発生から十数分の猶予がある火災と違い、液状化現象は地震直後に発生する。迂闊に車でその上を通ると、地面に埋もれて身動きが取れなくなる危険がある。さらに、東京湾で3m以上の津波が発生した場合、沿岸部の工場などを押し流すことも考えられる。

自分だけは大丈夫などと決して楽観視せず、避難経路や対策を家族としっかり話し合っておこう。(2020.2.11(火) 16:00配信 NEWSポストセブン)

自分のお住まいの地盤の性質によ地震発生時の被災状況は大きく変わります。最悪の事態を想定して対策を行いましょう。