専門家によれば、東京で同じような自然災害が起こると、尋常ではない被害が生じるという。

● 東京では約258万人が 「海面下」の低地に居住

 東京で起こる可能性がある自然災害として、よく例に挙げられるのが「首都直下型地震」だ。 内閣府によると、東京都大田区付近の直下でマグニチュード7.3の大地震が起こった場合、最大死者約2万3000人、倒壊・焼失する建物は約61万棟、経済的損失が約95兆円と公表している。 当然、この被害も甚大であるが、最近にわかに問題となっているのが高潮による水害だと、指摘。

東京でも特に水害のリスクが高い地域は、東部に位置する江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)だという。

「約258万人住んでいるこの地帯は、海抜ゼロメートルといわれていますが、実は海面下のマイナスメートル地帯。つまり、海面より下に258万人がいて、それらを守っているのが堤防1枚のみという大変危険な状態なのです。もし大規模な浸水が起これば、人口の9割以上に及ぶ、250万人が隣県などに広域避難する必要が出てきます。

● 伊勢湾台風を超える高潮なら 江東5区は2週間水没する

 仮に1959年に発生した伊勢湾台風をしのぐ台風による高潮が東京で起きた場合、どのような事態が想定されるのか。 

「横浜側を台風が通ると、東京湾に対して反時計方向に風が吹き込み、高潮が発生します。最も危ない江東5区に大量の水が流れ込むと、少なくとも2週間は水没状態に陥るでしょう。避難しようとしても、この地域は江戸川、中川、荒川、新中川、隅田川など川だらけ。となると、橋を渡らないといけないわけですが、橋がボトルネックとなって、大渋滞が予想され、全員が避難できるまでに3日間はかかります」

● 西日本豪雨のような膨大な雨も脅威だと、警鐘を鳴らす。

「西日本豪雨で一番激しく降った高知県の馬路村魚梁瀬(うまじむらやなせ)では、1850mm以上でした。また、西は長崎、東は岐阜まで、非常に広い範囲で、少ない地域でも500mm以上のボリュームの雨が降った。この降水量は、過去に類を見ないものでした。仮にこのレベルの雨が関東、特に利根川、荒川などの上流域にかかると、すべて下流の江東5区に集まるので、被害は想像を絶します」

● コミュニティーの再建が 最善の防災対策

 命のつながりという観点から、地域社会、コミュニティーを考えなければ、防災の実効性はない。

● 災害対応意識の低い日本人 避難呼びかけを無視することも

「自分の命は自分で守る」という意識が低いことが、行政が避難を呼びかけても、住民が逃げようとしないというケースにつながっているとも言える。片田氏は、住民に対して単に防災意識を高めようとしたり、防災知識を身につけてもらうように啓蒙活動したりするだけでは解決できない。

どんなに精密なハザードマップを作ったとしても、実際に住民が避難行動に移らなければ、人命は救えない。コミュニティーの再生が一番の防災対策なのだ(2019.2.8(金)6:00配信 DIAMOND online)

自然災害はあらゆる形で被害をもたらします。所詮人間は自然には勝てません。しかし人間には助け合うという強みがあります。あったはずです。日本はもともと長屋文化です。現代において西洋文化が日本に入り本来日本人が持っていた長所が失われていきました。マンション生活ではお隣にどういう方が住んでいるのか知らないという現状です。しかし災害に立ち向かう時、この長屋文化で培ったコミュニティは最大の効果を発揮します。防災という視点でいえば、今一度、長屋文化を再生させる必要があるのかもしれません。