「Go To トラベル」の広がりで、旅行ムードが高まる中、台風や地震の被害が相次いでいる。

「Go To キャンペーン」はまだまだ続くだけに、旅行中に被災しないとは限らない。旅先で被災したら、どう対応すればいいか。そもそも出発前に準備しておくことはあるのか。

大型で強い台風10号は沖縄から九州にかけて“殺人的な暴風”で激しい被害をもたらした。長崎市野母崎では観測史上最高の風速59・4メートルを記録。同じエリアでは先週、台風9号も猛威を振るっている。7月には熊本や中部地方が激しい集中豪雨に襲われた。昨年9月は、台風15号が千葉に上陸。関東に上陸したものとしては観測史上最強クラスで、屋根が吹き飛ばされ、多くの家屋がブルーシートで覆われた。

毎年のように各地で塗り替えられる過去最強や観測史上最高の記録。異常気象は異常ではなく、“通常運転”といった状況だから、それがGo Toのさなかにブチ当たっても不思議はない。

旅行の口コミサイト「フォートラベル」の調査によると、国内旅行中に自然災害の影響を受けた人の割合は24・1%。4人に1人だ。災害の種類は、「台風」が50%で、「大雪」36・2%、「豪雨」18・4%と続く(複数回答)。調査は2014年に行われたから、異常気象が日常化した今、災害経験者はもっと多いかもしれない。

旅行中の被災は、誰にでも起こり得るということ。しかも毎年のように史上最強クラスの暴風雨が襲来するとなると、旅行中の被災を想定した対策や準備が必要だが、自宅に用意するような防災グッズを一式、スーツケースに詰めて旅行するのは現実的ではない。ではどうするか。

「避難所がどこにあるのか、どこの川が氾濫しそうなのか、道路事情はどうなのかなど、旅先で被災した時に一番求められるのは情報です。情報を入手するためのアイテムといえば、スマホ。ですから、旅行中の被災を想定した対策や準備は、スマホの使い方を改めることが大切です」

スマホをとことん使い尽くすのではなく、「改める」のがミソ。暴風で電信柱が倒されたり、大雪で電線が切断されたりすると、停電の恐れがある。地震で発電設備がダメージを受ければなおさらだ。

「旅先で被災すると、停電でスマホを充電できなくなるリスクが高い。ですから被災時は、電池を節約しながらスマホを使うことが大切。あれもこれもスマホで検索するのではなく、検索量を最小限に抑えるのです」具体的にどんな工夫なのか。対策を順に見ていこう。

旅行前にできる5つの備え

■防災マップは出発前に紙で用意する

旅行中でも宿の中での被災なら、スタッフの指示に従えばいい。厄介なのは、旅行中の外出時だろう。

「自治体のHPにはたいてい、ハザードマップがPDFファイルで掲載されています。そこには、避難所などの施設が地図上に記されていることが多い。宿泊地のハザードマップを出発前にプリントアウトして手持ちのカバンに入れておけば、イザという時、一目瞭然です」

宿を替えながら連泊する時は、その分の地図を全てプリントアウトしておくといいのだという。

■情報入手は役所へ、ネットではNHK

ツイッターをはじめとするSNSは、今や情報源になっている。しかし使わないのがベターだという。

「ツイッターは局地的な情報を伝えますが、投稿者の主観が強いし、掲載している写真によって情報のニュアンスが変わってきます。客観性に欠くのです。

被災地の情報を入手するなら天候次第では役所に行く。外出が困難な天候ならNHKや地元紙、全国紙など客観性の高いメディアのサイトをチェックするのがセオリーです。あるいは、天気アプリもいいでしょう」

役所に行けば、充電サービスを受けられるメリットもある。役所の場所を把握する上でも、事前に地図を用意しておくと便利だ。

■ラジオはアプリではなく小型を携帯

被災時にはラジオが役立つ。

スマホには、ラジオを聞くことができるアプリがあるが、別に小型を携帯する方がいい。

「スマホでラジオを流し続けると、電池が消耗します。被災時のスマホは検索と通信に限定して使用し、なるべく電池の消耗を防ぐ。そのためにはラジオは小型を別に携帯するのです。最近のものは高性能でコンパクト。持ち運びしやすいですから」

■充電用の携帯バッテリーは1人1台

万が一、旅行中の外出時にスマホの電源が切れたらシャレにならないだろう。

「フル充電を2回できるくらいの容量の携帯バッテリーは必須です。1人1台で人数分。中国製など海外のものは安く購入できますが、発火リスクがあります。日本製で5000円前後のものがおすすめです」これくらいの容量のバッテリーがあれば、万が一、停電になっても2泊3日程度はしのげるだろう。

■キャッシュレス派も必ず現金を

2年前の北海道胆振東部震では、全道がブラックアウト。

その余波でコンビニやスーパーでは、キャッシュレス決済がパンクし、キャッシュレス派が悲鳴を上げていた。

「旅先に大金を持ち歩くことに抵抗を持つ人はいるでしょう。しかし、停電するとキャッシュレス決済ができなくなり、現金決済のみになる恐れがあります。その時、手持ちの現金がないと、水も食料も買えません。普段はキャッシュレスの人も、旅行時は多少の現金を出発前に用意しておいた方が無難です」

北海道胆振東部地震では、ATMも停止していた。地図と一緒に現金も出発前に用意しておこう。

何もかもスマホで事足りるが、被災時に停電が重なると、限りある充電を節約することが欠かせない。被災時は、意外にもスマホに頼り過ぎない工夫が重要なのだ。(2020.9.9(水) 9:26配信 日刊ゲンダイDIGITAL

自然災害はいつ、どこで発生するかわかりません。出張や旅行など自宅や職場以外の場所で被災する可能性は誰にでもあるのです。現代において携帯電話はただの通信手段ではなく情報収集のツールとなっています。特に災害時には便利なツールです。北海道胆振地震の際にはブラックアウトが発生し携帯電話の充電のために市役所等に長蛇の列ができました。また、キャッシュレス社会において電子マネーが使えない、ATMも稼働していない状況はまさに近代化社会の災害トラブルを顕著に現わしていました。どのような対策や行動が必要なのかを平時からシュミレーションしておくことは防災対策の上でとても大切なことです。