阪神大震災から25年。この間に東日本大震災など各地の地震の経験を経て向上した耐震技術、液状化対策の「拘束地盤免震」を紹介する。

過去最大規模の液状化被害を起こした東日本大震災と同様の被害が懸念される南海トラフ対策には不可欠な技術だ。(編集委員 北村理)

液状化は、ゆるく堆積した砂地盤などが地震でゆさぶられることにより、地下水が上がり、地盤が液体のようになって流動化する現象。地盤が傾斜地、段差地にある場合は、地盤全体が水平方向に移動する側方流動を起こす。世間に知られるようになったきっかけは昭和39年の新潟地震だ。地盤の弱い河畔のアパートが横倒しになり、側方流動で川幅が約20メートル狭まった。

平成7年の阪神大震災では液状化により神戸港が被害を受け、国際港としての地位が低下した。23年東日本大震災では、東北沿岸のほか、千葉県浦安市の住宅街など首都圏も地盤沈下などの被害が発生、過去最大規模の液状化被害をもたらしたとされる。今後30年間で発生確率が70~80%にのぼる南海トラフ地震でも同様の被害が想定される。

液状化対策として、技研製作所(高知市)は「拘束地盤免震」で被害を軽減する工法を開発した。

この工法は液状化が懸念される地盤に建造物を建築する場合、鋼矢板を地中深く差し込み、敷地に沿って連続した壁をつくるというもの。これで液状化の影響が建造物の下の地盤に及ばないようにし、建造物を沈下による被害から守る。建造物のみならず、埋め立て地などで鋼管杭(くい)や鋼矢板による連続壁を設けることで側方流動対策も可能だ。2025年大阪・関西万博の開催地で、大阪府市が誘致に取り組む統合型リゾート施設(IR)の予定地にもなっている大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)の地震対策としても期待される。

石油タンクに使用する場合は円形状に鋼矢板の連続壁を設ける。盛土の上の鉄道の線路や道路などは、線路や道路の両側に沿って鋼矢板の壁をもうけ、盛土の下の地盤を挟み込むことで、液状化による斜面崩壊などから守るなど、建造物の形状によって自在に対策を講じることができる。また、既存の建造物の敷地に鋼矢板を打ち込むことも可能だ。工事はくい打ち機械の幅だけで行えるため、鉄道や道路などを通行止めにする必要がないなど業務への影響は最小限に抑えることができる。技研製作所は「従来の薬剤注入などによる地盤改良よりも工期や費用を抑えることができるため、対策を急ぐことができる」と強調している。(2020.2.19(水) 20:00配信 産経新聞)

北海道胆振地震で発生した地震でも液状化現象が起こり多くの家屋が被害を受けました。紹介されている技術は既存建物であっても対応できるようです。技術大国日本においてこのような新しい技術がどんどん開発されていることを期待しています。