風15号による高波の影響で東京湾に面した横浜市金沢区の護岸が崩壊し、隣接する工業地帯に海水が流入、多くの工場や事業所で機械が損壊するなど被害が出ている。「最強クラス」の台風直撃から2日余り、被害は甚大で、一部で停電や断水が続く。全容は判明していないが、被災は数百社に上る可能性があり、復旧の見通しも立っていない。「廃業するしかない」。事業者からは悲鳴が上がり、市は実態調査を進めるとともに支援に万全を期す方針だ。

11日、工場が集積する福浦地区の路上には倒木やガスボンベ、廃材などが散乱していた。海水に含まれていた泥が乾き、砂ぼこりが舞う。海に面した道路脇では標識やカーブミラーがひしゃげ、自動販売機が押し流されるなど高波の威力を物語っていた。工場は軒並み壁や窓ガラス、シャッターが壊れ、大量の海水が襲った痕跡が随所で見られる。酷暑の中、工場や事業所では従業員らが後片付けに追われていた。

掘削用などの鋼管を製造する山和鋼管の工場では一時、腰の高さまで海水が流れ込んだという。鈴木千代美社長(48)は「購入当時は十数億円もした機械類が全て駄目になってしまった。保険が適用されるかも不透明で、約40人の社員とその家族を考えると言葉が出ない」とうつむいた。

被災したのは中小零細企業が多く、業種は幅広い。鉄筋加工業ブラストの酒井照人専務(62)は「事務所のパソコンのデータが消えてしまった。金沢区の津波ハザードマップでは今回の波高では大丈夫だと思っていたのに、まさか護岸が壊れるとは」。木型製作を手掛けるミナロの緑川賢司代表取締役(52)は「機械が壊れるほどの浸水は全くの想定外。事業継続を断念せざるを得ない事業者も出てくるのでは」と漏らす。自動車解体業、大橋商店の大橋昭彦常務(58)は「台風シーズンを迎えて今後が心配でたまらない」と訴えた。

市は都市改造方針「六大事業」の一つとして1971年から金沢区の沖合を埋め立て、市内に点在する工場などを集積した。市は12日から、市金沢産業振興センター内の横浜企業経営支援財団に現地相談窓口を設置、経営全般について幅広く対応する。

一方、市消防局によると、福浦3丁目の横浜ヘリポートが浸水し、格納庫内の消防防災ヘリコプター1機が運航不能となった。残る1機は県外で点検中で、緊急時は協定に基づき、東京消防庁や川崎市消防局に応援を求める。(2019.9.11(水) 23:30配信 カナロコ神奈川新聞)

中小企業のBCP作定率は0%という実態が帝国データバンクの調査で発表されています。災害に対する備えは企業のつとめです。これを機会にBCPの策定を始めてください。